第14章 お出かけの続きを
【実弥side】
今日は朝から静かだ。
静か過ぎて、何だか落ち着かねェ。
たった数ヶ月前まではこれが当たり前だったのに、と思う。
あいつは一人でいる時もごちゃごちゃと喋るし、あいつがいる場所からは何かしら音が出ている。叫び声とか物を落としたりとか。
あんだけうるさいと思ってたのに、いざ静かになると落ち着かないなんて…慣れってのは怖いなァ。
まぁ、ノブがいなくても、やることは変わらない。稽古をして、部屋で少し寛いでいたら、それをぶち壊しにする声が響いた。
「不死川さーん、いますかぁ?不死川さーん。ごめんくださ~い!不死川さーん!あれ?いないのかなぁ。不死川さーん!」
「うるせェッ!甘露寺!そう何回も何回もでかい声で呼ばなくても、聞こえてるッ!」
襖を乱暴に開け、部屋から出ながら、吐き捨てるように言う。
しかし甘露寺には、何も響いてもいないようだ。こちらのことはお構いなしに喋り続ける。
「あー良かった。不死川さん、いた。あのね、不死川さん、私今からは一旦おうちに西瓜を持って帰らないといけなくて。今ノブちゃん、西瓜3個持って帰ってきて貰ってるの。よかったらお迎えに行って貰えないかしら?流石に3個は重いだろうし」
「あぁッ!?西瓜3個ォ!何で俺がッ!」
持てないほどの西瓜を買うのか。自業自得だろう!何で俺がそれの尻拭いをしなきゃならねぇんだァ!
「今からはおうちに帰ってノブちゃんの所まで戻ると時間がかかるし。ねっ、お願いね、不死川さん!あ、それとこれ。ノブちゃんのお土産。不死川さんにって。ノブちゃんね、他に殆ど買ってないのよ。行きたいお店もここだけだったし。
そうそう。それとね、ノブちゃん、ちょっとおかしかったのよねぇ。何かすごく心ここにあらずって感じで。ねぇ、不死川さん、いつもあんな感じなの、ノブちゃんって?
あぁ、大変!後でお館さまの所にも行かなきゃいけないから。とりあえずノブちゃんのこと、よろしくね、不死川さん。私も荷物置いたらすぐ戻るから~」
「オイッ!甘露寺ィッ!俺は迎えに行くとは、一言も言ってねぇぞォッ!オイッ!コラァッ!!」
俺の言葉は全く聞かずに、自分の言いたいことだけ言って、甘露寺は出ていった。