第14章 お出かけの続きを
「誰か来ないかなぁ。そしたらどっちに行ったらいいのか聞けるのに……あっ!」
そう言えば、私実弥さんの屋敷の住所。覚えてない…
何となく聞いたけど、必要じゃないからと、覚えてなかった。誰か来たとしても、どう聞いたら伝わるのか。
色々と考える。とりあえずいつも行く町に戻れればいい。だけど、その町の名前も全く分からない。
「私のばか~」
そう呟きながら、頭を抱える。お手上げだ。この世界で生きていけると思っていた。だけど、それは、誰かに守られているからこそ、成り立っていた。
やっぱり私は…
「何もできないんだなぁ…」
呟きながら、空を見上げる。所々に雲があるが、澄みきった青空がどこまでも続いている。私の大きなため息は、誰にも聞かれることなく、地面へと落ちていく。
だが、落ち込んでばかりもいられない。無力感に苛まれながらも、何とか気持ちを立て直そうとする。
「とりあえず人が来るのを待つッ!」
今できる最良の事をする。それだけだ。
そう思い待つ。誰かが通るのが早いか、蜜璃ちゃんが帰って来るのが早いか…。
どちらにしても、私がここで勝手に動いていい訳じゃない。待つことも大事だ。
五分程待っただろうか。右側の道に人影が見えた。
「良かった。誰か来た」
目を凝らしてよく見てみるが、よく分からない。でも桃色は見えないから、蜜璃ちゃんではないのだろう。
何か変だ、あの人。ものすごく速い気がする。
そう思った瞬間、声が出た。
「えっ?実弥さん?」
目にも止まらぬ速さとはこの事を言うのではないだろうか。さっき人影が見えたと思ったら、もう目の前にいる。鬼殺隊の柱ともなれば、当たり前なんだろうなぁ。
目の前に来たと思えば、眉間にシワを寄せ、目はつり上がり…どす黒いオーラを纏っている…
これは、めっちゃ怒ってるな。
そう思った途端、案の定、怒鳴られたのだった。