第14章 お出かけの続きを
「木蓮って言うのね、あの鎹鴉」
「そうなの。けっこう気がつよいんだけどね…でもすごく助かってるのよ」
「ねぇ、ノブちゃん。お館さまが早めにって言ってたから、先に自分の荷物を家に置いてこようかと思ってるんだけど…走ればそんなに時間がかからないし」
「そうだよね。うん。大丈夫だよ」
「さすがに走ると、5個は無理だから、私が戻るまで西瓜を持って貰わないといけないけど…」
「大丈夫よ!無理だったら待ってるし」
「ごめんね、ノブちゃん」
「仕方ないよ。お館さまに渡そうって言ったのは私だし。ゆっくり歩いていくよ。蜜璃ちゃんが本気で走ったら、めっちゃ早いだろうし」
「うん。超特急で戻ってくるわ」
「ありがとう」
木陰で立ち止まり、西瓜を持つ。一つは肩に、そして、両手に。
「うーん。これ以上は持てないかな…蜜璃ちゃん、おはぎだけ、持って貰える?とりあえず持って帰ってきてくれたらいいから」
「分かった。私の甘味の上に置けばいいし。だけど。やっぱり後にしよっか?重いでしょ?」
「重いけど大丈夫よ。すぐに蜜璃ちゃん、帰ってきてくれるんでしょ?」
「うん。じゃあ、行くね。急いで帰ってくるから!」
そう言い振り返ると、すぐに走りだした。蜜璃ちゃんの後ろ姿は、もう豆粒のようだ。天元さん程ではないのだろうが、十分早い。
蜜璃ちゃんの家がどこか分からないが、そんなにかからずに戻ってきてくれるだろう。
それより、不安なのは帰り道だ。
見る限りは一本道だし、来た時もそんなに曲がったりはしなかったと思う。
『絶対迷子にだけはなるんじゃねェぞォ…』
実弥さんの言葉を思い出す。
迷子にはならないようにしたいが、今は仕方ない。とりあえず分かるうちは進まないといけない。悩む場所があったら、その時考えよう。
ずしりと西瓜の重さがのし掛かるが、弱音を吐くわけにもいかない。
ゆっくりと確実に一歩一歩、足を前に出して進んで行くだけだ。