第14章 お出かけの続きを
花田屋の赤い暖簾をくぐり、外へ出ると、眩しさが目に刺さる。持ち帰りの甘味を手に持ち、向かいの八百屋へと向かう。
「すみませ~ん」
ちょうど店先に誰もいなくて、奥へと声をかける。商品として置いてあった西瓜は見当たらない。ぐるっと店内を見渡せば、奥に風呂敷で包んである五つの丸い物体が目に入った。おじさんが持ち帰りやすいようにと、準備してくれているのだろう。
「はいはい。すみませんね、お待たせして。おぉ、お前さん達か。もう帰るのかい?預かってた西瓜は、ここに準備してるよ」
そう言いながら、奥からおじさんは出てきた。
「ありがとうございます。助かります。風呂敷は後日お返しに来たら…」
「いや、この風呂敷も含めてだから、大丈夫だよ。それにしても、あんた達二人でこの数の西瓜を持って帰れるかね?」
西瓜を軽く叩きながら、八百屋のおじさんは尋ねる。二人で五つの西瓜だ。実際目の前にすると、かなりの大きさだ。でも、持ち帰らないわけにもいかないだろう。
「ええ、何とか…」
そう言いかけた所で、蜜璃ちゃんの大きな声が響く。
「大丈夫ですよ、これくらい!ノブちゃんはこれお願いね」
そう言い、花田屋の持ち帰り分を渡されると、蜜璃ちゃんは右手に二個、左手に三個、軽々と持つ。
筋肉が普通の人の8倍…だったかな?これくらいは蜜璃ちゃんにとっては当たり前なのかもしれない。
実際に目の当たりにすると驚いてしまった。
「おっ!すごいなぁ、姉ちゃん!軽々持つなぁ。それは一玉でも結構重いぞ。なぁ、うちで働いてくれないかい」
おじさんも驚いてはいたが、さすが商売人だ。会話がうまい。それに蜜璃ちゃんも笑いながら答える。
「おじさん、残念。私、お仕事あるからここでは働けないわ~」
「ハッハッハッ!そうだよな。仕方ない。でも、また来てくれよな」
「はい。色々とありがとうございます」
八百屋さんのおじさんに別れを告げ、朝来た道を戻る。