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【鬼滅の刃】あなたに逢いに 

第14章 お出かけの続きを


お猪口を持てば、冷たさが指先から広がっていく。
こういったもので、涼をとっていたのだろうと、実感する。

現代に比べると、この時代は便利なものはない。一つ一つに時間がかかる。でも、だからこそ生活の知恵は多い。
ゆっくりと流れる時間に慣れてしまえば、この方が生きている、時間を過ごしていると思えてくる。
現代の便利だけど時間に追われた生活はただ時が流れていた、過ぎていただけだ。なぜあんなに時間に追われて、色々な事をしていたのだろう。

この生活の方が質素だし大変なことも多いけど、妙にすっきりした気持ちで毎日を過ごしている。今では前からこの世界にいたんじゃないかと錯覚するくらいだ。それだけ、ここの生活に馴染んだ証拠だし、現代の生活を忘れかけている証拠でもあるのだろう。

一人だけ時が止まったかのように、お猪口に入った水まんじゅうを眺めていれば、さすがに蜜璃ちゃんも困ったような顔で声をかけてくる。

「どうしたの、ノブちゃん?ずっと眺めてて、止まってるけど。具合でも悪いの?」

「ごめん、ごめん。すごくかわいいなぁと思ってね。ぷるぷるって、なるでしょ。食べたら終わっちゃうから、このぷるぷるを楽しんでただけよ」

そう笑顔で答える。だけど、蜜璃ちゃんはそれでは納得しなかった。

「何だか今日は少しノブちゃんが心ここにあらずみたいな感じだったから。ちょっと心配で。疲れちゃった?私に振り回されてばかりで、嫌になっちゃった?」

蜜璃ちゃんは言いながら、今にも泣きそうになっている。蜜璃ちゃんも不安だったのだろう。
何度も何度も考え込んでいる姿を見せてしまっていたのだから。

「ごめんね。蜜璃ちゃん。心配させちゃったね。本当の事を言うとね、私、記憶がないでしょ?今日連れてきて貰った所は初めて見るものばかりで、でも、何だか懐かしくて。自分の記憶の片隅に何かあるんだろうなぁと思って。だから、ちょっと色々と考えることが多かったのかも。
この水まんじゅうもそう。このぷるぷるとした甘味も、どことなく覚えてるの。でも、それがどこでどうしたのかは、全く思い出せなくて。何だろうなぁって、考え込んじゃってた。ごめんね、蜜璃ちゃん。心配かけて。
でも私、今日はすごく楽しいし、蜜璃ちゃんと色々お話しできて嬉しいのよ」

自分が伝えられる最大限を、ゆっくりと蜜璃ちゃんに伝える。


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