第14章 お出かけの続きを
「お待たせしました。水まんじゅうと、甘露寺さまのご注文の分です。それとお持ち帰りの桜餅は今日は30個しかご用意できませんが、よろしいでしょうか?」
「ええ。今日はお願いするの、忘れてたし。大丈夫です。あと、この2つの練り切りとこのお饅頭もあるだけ持ち帰りでお願いしますね」
「承知しました。では、ご準備しておきますね。それと、ほうじ茶です。ごゆっくりどうぞ」
そう言うと、店員さんは裏の厨房に戻っていく。先ほどの洋食屋の店員さんと違って、驚かないところを見ると、蜜璃ちゃんのことは充分ご存知なのだろう。
目の前には色とりどりの甘味が並ぶ。ここが和菓子売場のようだ。十種類程だろうか、それぞれ5個ずつ持ってきているが、それでも50個だ。
「いただきま~す」
蜜璃ちゃんがそう言うと、目の前にあった甘味が次々に口の中に吸い込まれていく。今日二度目の蜜璃ちゃんの食事姿だから、驚きは最初程ではない。
でも、甘味がどんどんなくなっていく状況も、これはこれで圧倒されるものだ。
もう既に10個はお腹の中に収まった。一つ食べるごとに美味しいと言いながら、笑顔になる。食べ物を食べている時の蜜璃ちゃんは、本当に幸せそうな笑顔で、こっちまで幸せな気持ちになる。
伊黒さんじゃなくても、ゆっくりと眺めていたいと思うし、美味しいものを好きなだけ食べさせてあげたいと思う。
それにしても、すぐに次の甘味が口に入っていくが、この細い体のどこに入っているのだろうと、疑問に思う。燃費が悪いからたくさん食べないといけないのは分かるが、一度に食べられる量もかなり多い。胃袋の伸縮性がすごいのだろうか。
そんな事を考えながら、自分の前に置かれている水まんじゅうを見る。小さなお猪口に、ぷるんと可愛らしく収まっている。
どこからみても透き通っていて、涼しげだ。夏限定の水まんじゅうは、現代でもよく食べていた。プラスチックの容器に入れられるよりも、お猪口に入っている方が、風情はいい。