第14章 お出かけの続きを
店員の前にはたくさんの甘味が並んでいる。練り切りと言っただろうか、少し凝ったものも多い。
「私はもう決めたわよ。すみません、これ全部10個ずつ、それは店内で食べる分で、あと、お持ち帰りで桜餅をあるだけ全部ください」
「お持ち帰り分は確認します。店内でお召し上がりになる分はお席にお持ちしますね」
淡々と話しているが、多分、初めて聞いた人は驚く内容だろう。桁が一桁違う。分かっている私でも、やっぱり驚いてしまう。
「じゃあ、私はこの水まんじゅうを一つ、店内で食べます。あと持ち帰りで、おはぎを4つお願いします」
「あら?それだけでいいの?」
「うん。結構お腹いっぱいだし。お土産って言っても、実弥さんだけだし」
「承知いたしました。ではお持ち帰り分はご準備しておきますね。お席でお待ちください」
店員さんはそう言うと、厨房に入っていった。確認するのだろう。蜜璃ちゃんは慣れた様子で、窓際の席に座っていた。私もそれに続き、向かい側に座る。
店内は落ち着いた雰囲気で、所々に季節の花が生けてある。やはり、どことなく華子さんのお店に似ている。
「ノブちゃん、何か気になるものでもあるの?さっきからお店の中を見回してるけど…」
「いや~、何だかいつも行く甘味屋に似てるなぁと思って。甘味屋さんって、どこもこんな感じなの?」
「あー!ここね、さの屋のお弟子さんがしてるお店だからよ」
「ん?さの屋?」
「ノブちゃんと初めて会った甘味屋じゃない」
…知らなかった。華子さんの甘味屋さんの名前、初めて知った。おいおい、誰も教えてくれなかったよ。
「さの屋って言うのね。初めて知ったわ。だから、赤い暖簾も一緒だったのね」
「そうそう。さの屋も美味しいんだけど、ここもまた少し違って、美味しいのよ」
「うん、楽しみ」
そんな会話をしていれば、店員さんが甘味を持って来てくれた。