第14章 お出かけの続きを
私はというと、イヤリングよりもリボンの方が気になっていた。少しいい生地、珍しい生地を使えば、売り物に、近いようなものが作れそうだ。
リボンだったら、あまり生地もたくさん使わないし、無地と合わせてもいいだろう。後で少し生地屋にも寄らせてもらおう。
ぼうっと商品を眺めていれば、肩を叩かれ声がかかる。
「ノブちゃん、ノブちゃん」
「ごめん。見とれてた」
「じゃあ、次のお店に行きましょう」
人の間をすり抜け、店の外に出れば、不思議な空間から戻ってきた感覚だ。それほど先程の店の異空間、異世界感が強かった、ということだろう。
その後もいくつかのお店を回る。全て蜜璃ちゃんのおすすめのお店だ。行きつけのお店もあり、店員さんと蜜璃ちゃんの会話を聞き、楽しく過ごす。
そのお店の中に生地屋もあった。正しくは着物を扱っているお店なのだろうが、生地も売っていた。
蜜璃ちゃんが着物を見ている間、店内を見て回る。どうみても着物には手が届かない。それに、そんなに高価な着物は必要もない。
目の保養だな、と思い見ていると、店の端に生地が雑然と置いてあった。気になり、近づいてみる。
着物を作るときに余った生地のようだ。金額的に手頃な値段で色とりどりの生地がある。奥に置いてあるにも関わらず、人気なようで、少しだけ見ている間にもお客さんが買っていっていた。
私も生地を手に取り悩んでいると、声をかけられた。
「いい生地でしょう」
声の方を振り向けば、紺色の着物を着た男性が立っていた。年齢は22、3歳といったとこだろう。
「ええ。普段だと絶対に手が出せないでしょうけど。お値段も良心的なので。でも、どれも素敵で…」
「今人気なのは、この柄ですね。大きな花が特徴ですし、色がキレイでしょう」
「本当キレイですね。うーん、悩むなぁ。私、この黒の生地にお花がついているのも好きなんですよ」
「お客さん!ここだけの話、それはこの中でもかなりお買い得ですよ。それに迷うときは一番好きだと思う物を選んだ方がいいですよ」
にこにこと笑いながら、男性は話す。
「そうなんですか?この中だと、これが一番落ち着いてる気がして…うん、これにしよう!すみません、これをください」
「はい。ありがとうございます」
その男性にお金を渡せば、奥に戻っていった。