第14章 お出かけの続きを
洋食屋に戻れば、蜜璃ちゃんはあと一皿というところだった。
「ごめんね。席を外して」
「大丈夫よ~。こっちこそ待たせてごめんね」
「全然待ってないから大丈夫よ。むしろ蜜璃ちゃんの食べッぷりが良くて、気持ちがいい位。ずっと見てても飽きないわ」
次から次へと食べ物がなくなっていく様子は、本当に気持ちがいい。
「ごちそうさまでした」
蜜璃ちゃんが手を合わせそう言うと、目の前には空になったお皿が積み重ねられていた。
「美味しかったね、蜜璃ちゃん」
「本当、美味しかったわ~!特にライスカレーとカツレツを一緒にしたでしたカツカレーだったかしら?あれは本当に美味しかったわ。また次も必ず頼むわ」
「カツカレー美味しいわよね。お店の方にはちょっと申し訳なかったけど…美味しいものは美味しく食べたいしね。あ、すみません。お会計をお願いします」
蜜璃ちゃんは話ながら、店員さんに声をかける。
「じゃあ、私の分を…」
「ダメよ。今日は私が誘ったんだから、私が奢るわ」
「え?でも…」
「いいの、いいの。ノブちゃんの頼んだ一つが増えても、ほとんど変わらないんだから」
「…分かったわ。ありがとう!今日はお言葉に甘えるね。でも次は自分の分は出すから。毎回だと申し訳なくて、お出かけしにくくなっちゃうから」
「そんなに気にしなくていいのに…でも分かったわ。次からはそうしましょう」
そう言いながら、手慣れた様子で店員さんに支払いを済ませ、席を立つ。
「さぁ、行きましょう!どこに行こうかしら、ね、ノブちゃん」
「蜜璃ちゃんのおすすめをお願いしまーす。あ、ごちそうさまでした」
店員さんに言い、ドアを開け店を出る。
カランカランとまた鈴の音が鳴れば、やっぱり懐かしい気持ちに捕らわれる。胸の奥がキュッと締め付けられる。バタンと、ドアの閉まる音を聞き、気持ちを切り替える。
何度も思い出しては、胸が痛んだ。
でも、今はそれに捕らわれている時ではない。
過去に…いや、現代か…
…捕らわれるな!ノブ!
自分で自分を鼓舞する。空を見上げれば、それを肯定するかのように、先程と変わらない澄みきった青色が広がっていた。
………
余談だが…
その洋食屋では、その後、カツカレーがメニューの一つになり、かなりの人気になったとか、ならないとか…