第14章 お出かけの続きを

せっかくお礼にと貰った西瓜だ。
一つはいつもお世話になっているお館さまに。お子さんもたくさんいるから、一個あってもすぐ食べてしまうだろう。

もう一つは悲鳴嶼さんに。
西瓜好きの玄弥くんに食べて貰いたい。それに、やっと玄弥くんとのきっかけにしたいのだ。

とりあえず、お館さまに相談だな。

「お待たせ致しました。ポークカツレツです」

店員さんが出来立てのポークカツレツを運んできた。ライス、ポークカツレツ、スープと、目の前にお皿が並ぶ。ふわりといい匂いが鼻をくすぐる。
うん。トンカツだ。出てくる物も現代と殆ど変わらない気がする。

「ここはね、スープもついてるの。スープまでついてくるところはあまりなくて、珍しいのよ」

「そうなんだねぇ。どれもとっても美味しそう。蜜璃ちゃんのはまだ全部来てないけど…」

蜜璃ちゃんはポークカツレツが一つだけだ。

「大丈夫よ～！気にしないで！私ももうお腹ペコペコよだし。さぁ、いただきましょう」

「うん。いただきます」

「いただきます」

食べやすいように切ってあるカツレツを一つ取り、口にいれる。サクッとした衣と、中のお肉のほどよい固さ。ジュワッと旨さが口の中に広がる。

「…美味しい」

「そうでしょ～！ノブちゃんにもそう言ってもらえて嬉しい！本当美味しいのよねぇ！」

そういう蜜璃ちゃんを見れば、もう半分近く食べ進めている。恐るべし、蜜璃ちゃんの食欲…

「お待たせしました」

店員さんが次のポークカツレツを持ってきた。蜜璃ちゃんの目の前に置かれていく。広いテーブルに座ったけど、次のカツレツが運ばれてきたら、もう置く場所はない。オムレツライスとライスカレーはどこに置くのだろう。

そんなことを考えていたら、蜜璃ちゃんはもう一つ目のカツレツを食べ終わろうとしていた。

「蜜璃ちゃん、早い…」

桜餅を食べている姿は見たが、他の食事は初めて見るのだ。蜜璃ちゃんの食べっぷりに驚き、つい声が漏れた。

「そうなの。美味しくてね、箸が止まらないの～！ノブちゃんも食べてね」

「うん！」

蜜璃ちゃんに圧倒され、一口しか食べていなかったことに気づく。
もう一口、口にいれる。
久しぶりのトンカツは、とても美味しかった。だけど、同時にとても懐かしくて、少しだけ胸の奥が痛んだ。