第14章 お出かけの続きを
店員さんは何度も往復している。お盆に載せきれないからだ。
「お待たせしました。ライスカレーです」
そう言って店員さんが持ってきた時には蜜璃ちゃんはカツレツを二つ食べ終わっていた。食べ終わった皿は端に重ねて置いているので、ライスカレーの置くスペースはできている。
そのまま食べ終わったお皿は回収して、店員さんはまた厨房に戻っていく。
ふわりとカレーのいい匂いが鼻先を掠める。
「うわぁ、いい匂い」
「そうでしょ~!この匂いを嗅ぐだけで美味しいのよ!」
「うん。分かる」
「そうだ、ノブちゃん。少しライスカレー、味見してみない?」
「えっ?いいの?」
「うん。せっかくだから、食べてみて」
そう言えば、ちょうど残りのライスカレーを持ってきた店員さんに取り皿をお願いしている。
取り皿が来るまで、カツレツを食べる。やはり美味しい。
「このくらいでいい?」
取り皿には山盛りのご飯だ。一人前のライスカレーの半分はあるだろう。流石に食べれない。
「ちょっと多いかな。もう少し減らしてもらえる?それの三分の一でいいかな」
「ごめんね。ノブちゃんのちょっとがどれくらいか分からなくて…。これくらいかな。どうぞ、ノブちゃん」
「我が儘言ってごめんね。ありがとう」
「ううん。大丈夫。食べてみてね。美味しいから」
渡されたライスカレーは、所謂カレーだ。先ほど鼻先を掠めたカレーの匂いを、ゆっくりと鼻から吸い込む。
うん。この匂い、懐かしい。
カレーの匂いを嗅げば、もう口の中はカレーの味を思い出すのだろう。唾液が溢れるように出てくる。
カツレツはひとまず置いて、カレーを一口食べる。
ピリッとした辛さはあるが、そこまで辛くはない。ツンと抜けるような様々な香辛料が口の中に広がる。
家庭で食べる市販のルウを使ったカレーではなく、お店で食べるカレーに近い。この時代、まだルウはないだろうから、お店の手作りなのだろう。
「美味しい…」
「良かった~!あとオムレツライスも少し食べてみてね」
「ありがとう、蜜璃ちゃん」
そう言い、もう一口カレーを口に含ませれば、また懐かしさと共に、胸の奥が痛むのが分かった。