第14章 お出かけの続きを
「蜜璃ちゃん、決まった?」
どうにも決めかねて、蜜璃ちゃんに聞いてみる。
「うーん。まだ。全部頼むんだけど、どれ位にしようか、悩んでてね。後で花田屋にも行くし」
悩んでいる次元が違った。参考にしようと思ったけど、蜜璃ちゃんの食べる量が違ったのを忘れていた。
「そっかぁ。全部ね。私はポークカツレツにしようかなぁ」
揚げ物はこの世界に来てから、一度も口に入れていないと思う。斉藤さんから習った料理は洋食はなかった。もし食べてみて作れるなら、作ってみたいと思う。
そう考えると、オムライスは卵があれば何とかできそうだ。
「あぁポークカツレツ、美味しいのよねぇ。はぁ、迷うわぁ」
「どうするの~蜜璃ちゃん?」
メニュー表とにらめっこしながら悩む姿はとても可愛らしいが、悩む内容は可愛いとは言いがたい。どんな頼み方をするのか、興味津々に蜜璃ちゃんに尋ねる。
「うん!決めた!決められないから、全部同じ数頼むわ。すみませ~ん!」
メニュー表から目を離し笑顔で答えてくれる。数についてはまだ不明だ。厨房の方に向かって声をかければ、先程の可愛い店員さんが小走りでやってくる。
「お待たせしました。ご注文、お伺いしますね」
「私はポークカツレツを一つ」
「ええっと、私は~オムレツライスとライスカレーとポークカツレツをそれぞれ五つ。あとコロッケは、三つで」
流石、蜜璃ちゃん。期待を裏切らない頼み方だ!だけど、流石に店員さんはかなり驚いていて、固まっている。
「お姉さ~ん」
声をかければ、何とか現実にに戻ってきたようだ。
「…えっと、……ご注文を、ご注文を繰り返しますね。ポークカツレツが六つ、オムレツライスが五つ、ライスカレーが五つ、コロッケが三つ。…以上でよろしいでしょうか?」
店員さんは注文を繰り返し、半信半疑で確認をするけど、そこは蜜璃ちゃんがしっかりと笑顔で答えるのだ。
「はい。やっぱりコロッケも五つでお願いしますね」
ごめんね、店員さん、と心の中で呟く。だが、私はそのやり取りに笑いしか出てこない。店員さんの驚きように比べて、平然としている蜜璃ちゃん。その対比が両極端すぎて、笑いを堪えるのに必死だ。
「……承りました」
顔面蒼白で、少しふらつきながらも、早足で厨房に戻って行った彼女を、笑いを堪えながら、気の毒そうに眺めたのだった。