第13章 迷子
どうしたもんかと、半ば諦めかけていた時、一人の男の人が声をかけてきた。
「じゃあ、お金じゃなくて、物にしたらどうだい?」
「ソレハイイカンガエデスネ!」
「なら、うちの西瓜なんてどうだい?最近出始めたばかりだが、うまいぞ。まぁ、うちの店の商品はどれもうまいがなぁ!」
見かねた八百屋のおじさんが声をかけたようだ。ちゃっかり自分の店の商品を売り込んでいるところは流石だ。
「イイデスネ!デハ、ソレニシマショウ」
「二人とも貰ってやんな。大事な子どもを見つけてくれたんだ。この旦那の気持ちも汲み取ってやんな」
八百屋のおじさんは、商売だけでなく、サムのお父さんの気持ちも分かった上で、提案していたようだ。
自分の子どもが迷子になって、誰かが届けてくれた。その相手にお礼をしたいと思うのは当然だろう。
自分の子どもが、迷子になったら…そう考えれば、父親の気持ちが痛い程よく分かった。何で気がつかなかったのだろう。
「…そうですね。流石にお金は貰えませんから。西瓜、いただきます。ごめん、蜜璃ちゃん、いいかな?」
そう言えば、蜜璃ちゃんも大きく頷く。
「ええ、そうね。そうしましょ。大丈夫よ、ノブちゃん」
「ヨカッタデス!デハ、ソコニアルスイカヲ、ゼンブクダサイ!」
「あいよッ!」
「いや、全部って、何個あると思ってるんですかッ!一個でいいです!一個で!」
「1コデハ、オレイニ、ナリマセーン!」
「でも、そんなに貰っても食べられませんッ」
「…私は食べられると思うけど」
ボソッと蜜璃ちゃんが呟く。確かに蜜璃ちゃんなら、二個位平気で食べそうだ。だが、それとこれとは違う!
お礼の方が豪華になっている。
「ほらほら、固いこと言いなさんな。お礼は素直に貰うもんだ!」
「ソウデス!オレイデス!」
「いや、西瓜ひとつでもいいお値段しますよ。五個って、一体いくらになるんと思うんですかーッ!」
「ン?ソウナンデスカ?オイクラデスカ?」
サムのお父さんが八百屋のおじさんに聞けば、八百屋のおじさんは金額を耳打ちする。
「ハッハッハ」
それを聞いたサムのお父さんは、突然大きな声で笑い出した。その様子に、私と蜜璃ちゃんは、ギョッする。