第13章 迷子
さっきまではただの可愛い男の子だったのに、一気に男性の色気と言うのだろうか、あのイケメンさというか、爽やかさというのか、言葉では言い表せない変化に、戸惑うのは仕方ないだろう。
私の中の外国人のイメージは、陽気なアメリカ人だけど、父親然り、それを体現しているのではと思えるほどだ。外国人のイメージがある私でも面食らった感じだから、ほとんど外国人を見ることすらない蜜璃ちゃんには衝撃的だっただろう。
開いた口が塞がらないというのは、この事を言うのだろう。そんな表情の蜜璃ちゃんも、私の中では衝撃的だった。
「さぁ、蜜璃ちゃん、そろそろ洋食屋さんに行こうか」
「…そっ、そうね。そろそろ行きましょうか」
声をかけられ、ふと我に返ったのだろう。少ししどろもどろになりながら、蜜璃ちゃんは答える。
そこへ、あの陽気な外国人、いや、サムのお父さんが少し焦ったように話し出す。
「オレイヲワタシテマセン!」
そう言いながら、財布からお金を出して渡そうとする。
「いやいや、貰えません!気にならないでください。お礼を貰うためにした訳じゃないですし。ね、蜜璃ちゃん!」
「ええ。お礼は結構ですよ」
二人して、何とか断ろうと身振りも加えて、サムのお父さんに伝える。それを聞いても、サムのお父さんはまだお金を渡そうとする。
「イヤイヤ、オフタリニ、オレイガシタイノデス。ワタシタチノ、タイセツナムスコヲ、タスケテクレタノデスカラ」
「いやいや、お金を貰うわけにはいきません」
「イヤ、オレイヲ…」
「お礼は結構ですから…」
何度もそのやり取りを繰り返す。そうすれば、さすがに何が起きているのかと、人が立ち止まりはじめる。
私たちの問答を見ているのが、目に入る。
只でさえ外国人は目立つのに、こんなことをしていれば尚更だ。だが、私達がお金を貰うわけにはいかない。
蜜璃ちゃんも何度もことわったのだが、打つ手なしのようで、眉毛がハの字に下がっている。