第13章 迷子
私の亀のような速さに比べ、小走りの三人はあんなに遠くにいたのにもう私の目の前までやってきている。
「サム、サム、サム」
たぶんサムの母親だろう。サムと同じ銀髪だ。その女性が、何度もサムの名前を言いながら近づいてくる。
その声が聞こえたのだろう。サムも目を覚ましたようだ。でも、まだ眠たいようで、頭を上げるものの、また肩に頭を乗せる。
「…マミー?」
母親らしき女性が私の目の前まで来ると、ぼんやりしている頭も少しはっきりしてきたのだろう。
「オー、サムー!」
サムの母親は泣きながらサムを抱き締める。そう、サムを抱っこしているので、私まで一緒に抱き締めている形だ。
「お母さん、お母さん、んー、マミーさん」
「ソーリー」
そう声をかければ、やっと腕を緩めて私の顔を見る。ずっと心配だったに違いない。子どもがいなくなったんだ。目はかなり赤くなっているから、泣いていたのだろう。
そんなサムの母親に笑顔を向け、そのままサムへと視線を移すと、ゆっくりと母親へサムを渡す。
「サム、良かったね。マミー達見つかって」
そう言えば、サムは理解したのか分からないが、しっかりと頷き、これでもかと母親の首に手を回し、ぎゅっと抱きついた。
そして二人で何か話し始めたのだった。
「良かったね、ノブちゃん」
二人を見つめる私に蜜璃ちゃんが声をかける。
「うん。良かった。ありがとう、蜜璃ちゃん。サムの両親を見つけてくれて」
「ううん。最初に探そうって言ったのはノブちゃんだし、私は最後に見つけただけ」
「そんなことないよ。蜜璃ちゃんが走って探してくれたから、すぐに見つかったんだよ。ありがとう。でも、本当に見つかって良かった」
「そうね。サム、本当に嬉しそう」
サムと母親だけでなく、いつの間にか父親も一緒に抱き合って喜んでいるのを見れば、頑張った甲斐もあるものだ。
「じゃあ、そろそろ行こうか。もうお昼になるよね?」
「そうね。先にご飯食べて、後からお店をまわりましょ」
「アノー、スミマセン」
二人で話していれば、途中で片言の日本語で話しかけられる。二人とも声のする方を見れば、サムの父親が近くまで来て話しかけてきたのだった。