第13章 迷子
「西瓜だ!美味しそう」
夏と言えば西瓜だろう。西瓜を見れば、一気に気分は夏になる。
それに、もう一つ。
西瓜と言えば、玄弥くんを思い出す。
どうしているのだろう。たぶん悲鳴嶼さんの所にいると思うけど。
どうにか、実弥さんとの仲を取り持ってあげたいとは思うが、どうしたもんかと悩む所だ。お館さまと会ってから、少しずつ考えているのだが、どうしてもきっかけが思いつかないのだ。
私がすぐに動ける状態ではないし、誰かを動かす訳にもいかない。
手紙を書いたところで、信じてくれる保証はない。今の私の書いたものは、子供のいたずらと思われておしまいだろう。
会えて話ができれば、何とか伝えたいことは言えると思うのだけど。どうしても私が知っているのは単行本で見た部分だけ。
刀鍛冶の里までに出てきたのは、記憶しているだけで、最終選抜、蝶屋敷、煉獄さんの訃報時、しかない。
そこからどうしているのか考えてはみるが、情報がなさすぎて分からないのだ。蜜璃ちゃんの話の中でも、玄弥くんは出てこない。
でも、今は悲鳴嶼さんの所にいることだけは確かだろう。煉獄さんの訃報は、悲鳴嶼さんと聞いていた筈だ。
「ノブちゃーん」
考え事をしていれば、遠くから蜜璃ちゃんの声が聞こえた気がした。顔をあげ左右を見渡すが、それらしい人物は見当たらない。
「あれ?気のせいかな…」
そう呟けば、今度はよりはっきりとした声が聞こえた。
「ノブちゃーん!ここよー!」
声は先ほど見回した場所ではなかった。一本奥の細い道だ。目を向ければ、蜜璃ちゃんの鮮やかな桃色の髪の毛と、金髪と銀髪の男女がこちらに向かって歩いていた。
「蜜璃ちゃん、良かった~。見つかったんだぁ!」
そう呟き、蜜璃ちゃん達が見える位置まで行く。蜜璃ちゃん達は歩いて、いやもう小走りでやってきている姿が見えたので、少しでも近づこうと歩いていく。
「サム、ダディーとマミーだよ。起きて!」
そう声をかけながら、歩くが、全く起きる気配がない。仕方なく、そのまま歩いて行く。