第13章 迷子
色々なお店が立ち並ぶ。ここが町の中心だろう。
アニメで見た浅草よりは都会ではないが、この時代だとここもかなり都会の部類に入るだろう。ここでほぼ欲しいものは揃うだろう。
ここでも、いくつかのお店で聞けば、やはり外国人の男女が子どもを探しているという情報は手に入る。
だが、探し歩いているのだろう。目立つだろうが、なかなか出会えない。
「行き違いかなぁ」
そう呟き、サムを見る。さすがに疲れているようだ。
年齢は分からないが、3歳か4歳くらいだろう。私達に会う前にもたくさん歩いたのだろうから、疲れて当たり前だ。
「サム、疲れたでしょ。ちょっとだけ、抱っこしていこうか」
目線を合わせてそう言うが、たぶん分かっていないだろう。サムの脇に手を入れ、持ち上げ、抱っこする。
サムは少し驚いたようだが、私の首に手を回しぎゅっとする。
「可愛い…」
思わず声が漏れる。
「ノブちゃん、いいなぁ。ノブちゃんが疲れたら、私が替わるわね」
「うん。あんまり長くはできないだろうから、その時はお願いね。蜜璃ちゃん」
「じゃあ私は少し先の方を探してくるわ。ノブちゃんはこのまままっすぐ行ってね。もう少し行けば左手に花田屋があるから、そこで待ち合わせね。サム、もう少しがんばろうね」
蜜璃ちゃんはサムの頭を撫でながら言う。
「じゃ、先に探してくる!」
そういえば、颯爽と走り去る。流石、柱だ!サムと私と一緒より、蜜璃ちゃんが一人で探した方が早いだろう。
「さぁ、サム、蜜璃ちゃんがマミーたちを探してくれるから、私達は花田屋さんまで行こうか」
「…」
話が通じたのか、分からないが、こくんと頷き、またぎゅっと抱きついてくる。
子ども達にもこんな事をされてたなぁと、懐かしく思う。たった2ヶ月程だが、段々と記憶が曖昧になってきているのを実感する。
一度ぎゅっと抱きしめる。
何とも言いがたい気持ちが込み上げ、胸が締め付けられる。
「さぁ、行こう」
そう声をかけ、歩き出す。
自分の中の溢れそうな気持ちを押し込めるように、一歩一歩足を前に出す。
爽やかな風が頬をかすめる。前に進む度にその風が、溢れそうな気持ちを取り去ってくれているかのようだった。