第13章 迷子
町の中心に近づくにつれ、人もお店も増えてきた。
「その子の親なのかな、さっき子どもを探しているっていう外国人はいたよ」
いくつか目のお店でそう言われた。
たぶんサムのご両親だろう。
「どちらの方に行きましたか?」
「町の中心の方に戻っていったよ」
「ありがとうございます」
蜜璃ちゃんと二人で声を合わせお礼を言う。そして、膝を折りサムの目線に合わせて身振りとともに伝える。
「マミーたち、ここまで来てたよ。後少しで見つかるよ。もう少し頑張って歩こうね」
「…マミー……ダディー」
サムは呟きながら少しだけ泣きそうになったが、すぐに私の顔を見て笑顔になる。まだがんばれる、大丈夫、と言っているかのようだ。
「よし、サム行こう。レッツゴーだよ」
「イエス!レッツゴー」
二人で顔を見合わせて、笑顔で言う。
そこに蜜璃ちゃんが話しかけてきた。
「ねぇねぇ、二人とも、れっつごぉって何なの?私だけついていけてないから、淋しい~!」
「ごめん、ごめん。レッツゴーは、さぁ行こうみたいな感じだったかな」
「ノブちゃん、外国の言葉、知ってるの?」
ヤバい……今頃気づいた。
私、記憶なかったって設定じゃん…
ない頭をフル回転させ、立ち上がりながら答える。
「ふふ。何か知ってるみたい」
「そうなのね~記憶をなくす前は外国人と話すことがあったのかしらね」
蜜璃ちゃんだからだろう。怪しまれずにすんなりと受け入れてくれた。
「そうかも。でも、喋れそうにはないかなぁ。何となく単語だけが浮かんでくる感じだよ。喋れればサムのことももっと分かるのにね」
サムを見ながら話せば、サムは首を傾げる。
「ごめん。大丈夫よ。今度こそレッツゴーよ」
「そうね、れっつごぉしましょ」
「レッツゴー!」
三人で言えば、楽しくなり笑いが溢れる。そのまま笑いながら歩き出す。
町の中心まで、後少しだ。手がかりが見つかった。ご両親も探しているなら、もう少しで見つかるだろう。