第13章 迷子
「泣き止んだかな。じゃあ、顔を拭こうか」
手を止め、その子の顔を覗き込みながら言うと、鞄から手拭いを取り出し、ゆっくりと、涙と鼻水だらけの顔を拭く。
「よし、男前!」
拭き終り、その子の顔をしっかりと見て、笑顔で伝えれば、その子も笑顔になる。
「やっと笑ったね。良かった。言葉は分かるかな?」
「………」
キョトンとした表情でこちらを見ているので、言葉は分からないのだろう。仕方ない。
「蜜璃ちゃん、ごめん。お店をまわるのは、後でもいいかな?先にこの子のご両親を探してあげたいから」
「もちろんよ~!はやく見つけてあげましょ。まあ、異国の人ってそんなにいないから、早く見つかると思うわ」
「そうだね。じゃあ、僕、お父さんとお母さんを探しに行こうか?んー、分からないよね。ダディー、マミー探す~?」
身振りを入れれば何となく伝わったようだ。英語は何とか通じるのかもしれないと思い、単語を入れる。
「マミー!」
「英語かな。でも、あんま分かんないや。ごめん。さぁ、行こうか。あ、名前は?んー、ユアネーム、何?」
良かった。英語は大丈夫なようだけど、私が大丈夫じゃない。英語は苦手で、簡単な単語しか出てこない。それでも身振りと日本語も交えて話しかける。
「…サム」
何とか伝わった!
「サム?」
男の子を指差し、そう聞き返せば、大きく頷く。名前はサムで間違いないようだ。
「良かった。サムだね。私はノブ、こっちのお姉ちゃんは蜜璃って言うの。分かったかな?」
「ノブ、蜜璃」
サムはそれぞれ指差しながら、名前を言う。ちゃんと伝わっている。
「そう!オッケーよ。よくがんばったね。じゃあ、ダディーとマミーを探しに行こう。レッツゴーよ!」
「イエス」
サムはにこっと笑い、立ち上がった。私も立ち上がり、手を繋ぐ。反対側の手は蜜璃ちゃんが繋ぎ、三人で歩き始める。