第12章 お出かけ
「ごめんくださ~い」
玄関から声がする。蜜璃ちゃんだ。急いで勝手口から出て、玄関に向かう。
「おはよう、蜜璃ちゃん」
「おはよう~、ノブちゃん」
「今日はよろしくお願いします」
そう言い、頭を下げる。
「こちらこそ。急に誘ってごめんなさい~」
蜜璃ちゃんも頭を下げる。蜜璃ちゃんは今日は袴姿だ。桃色をベースに小さな花がたくさんあしらってあり、紺色の袴がしっかりと引き締めてくれている。
可愛らしいとはこういう人のことを言うのだろう。
「ううん。隣町には行ってみたいと思ってたし、蜜璃ちゃんともお出かけしてみたかったから、とっても嬉しいよ。今日は隊服じゃないのね」
「私もノブちゃんとお出かけしたかったの~。今日はね、せっかくだから隊服はやめたの。袴だと動きやすいから。ノブちゃんも可愛いわね」
私も袴だ。まぁ、ほぼ毎日袴だ。
でも今日はお館さまから頂いた、お出かけ用にしている服だ。お館さまの所に行く時にも着ていった。
赤紫色の生地に白色で大きめの花がある。ちょっと明るい色で四十が着るには恥ずかしいのだが、今は見た目が若いようなので、大丈夫だろう。買うわけにもいかないし、いつも着る訳ではないので、諦めて着ている。
でも、袴は気に入っている。深い緑だ。実弥さんの隊服の色と似ている。これは本当好きな色だから、いつも着ていたいと思う位だ。
「お館さまから頂いた一張羅なのよ。ありがとう」
「そうなの~お館さまから頂いたなんて、羨ましいわぁ」
二人で顔を見合わせ笑い合う。
「じゃ、行こうか。話しは歩きながらでもできるし」
蜜璃ちゃんとだと、話が尽きない。隣町まで行くのに、このままだと出発できない。そう思い、声をかける。
「そうね。じゃあ、出発~!」
そう蜜璃ちゃんは言い、歩きだした。
私は一度屋敷に向かって一礼をし、小さく「行ってきます」と呟いた。直ぐに蜜璃ちゃんの横に並んで、歩き始めた。