第3章 お屋敷
「できたんですけど、これで大丈夫ですか?」
実弥さんの方へ振りかえる。
「あぁ、大丈夫そうだ。そしたら、腰の辺りにこの紐で縛る」
「はい。こんな感じですかねぇ」
何とか腰の辺りに巻き付けていけ、蝶々結びにする。
結び終わったけど、上がみつりちゃんみたいになっている。胸が全然ないから、実弥さんとお揃いな感じの方がしっくりくる。思わぬ発見にまた口走る。
「ねぇ~、これ実弥さんとお揃いな感じじゃないですか?ほらほら、ここの胸の開いてる感じが」と、実弥さんにあわせて更に胸元を開けてみる。
うん、いい感じ。
「はァ~?お前は何をしてる。馬鹿かァ。やたらと見せるんじゃない。さっさと、しまえッッ!」
早口で捲し立てられる。
「見られたところで減るもんでもないし。胸なんてちっちゃいし、子ども三人に母乳あげたから萎んじゃってますよ(笑)でも、実弥さんにとっては、おばさんの体を見せられても災難ですよね~。本当すみませんねぇ。私が、若い女の子だったら良かったですけどねぇ」
着物を閉じたり開いたりしながら、実弥さんに話しかける。
「いやいや、よくわからねェ。とにかく見せるなッ!さっさとしまえッッ!!あぁッッ、もう、面倒くせェ。」
結局業を煮やしたらしい実弥さんが、きれいに整えて帯まで結んでくれた。
「うわぁ、流石です!!ありがとうございます!これで寝られます」
「はァ。もういいだろう。さっさと寝ろやァ」
「はい。おやすみなさい」
着物が着れて一安心していた私は、後ろで実弥さんが頭を抱えてため息をついていたことなど、全く気付くことはなかった。
部屋に戻るとすぐに布団に潜り込んだ。
やっと横になれて一安心する。
今日は色々と訳の分からないことがあったけど、実弥さんに出会えて嬉しかった。例え死んでしまっていたとしても、いいんじゃないかな。
もしかしたら夢で、目が覚めたら戻っているかもしれない。
色々考えていたが、長くは続かなかった。流石に今日の疲労は凄まじく、すぐに意識を失った。