第3章 お屋敷
「浴衣の着方も覚えてないのかァ?」
「普段はいつも洋服ばかりで。浴衣は着たことはあるんですけど、それも着せてもらった記憶しかなくて…変なお願いしているのは重々承知してます。それこそ、お願いするのも恥ずかしいんですけど。もう、頼れるのは実弥さんだけなんですッ!お願いしますッ!」
深々と頭を下げる。
「…分かった。でも、自分でしろよォ。説明するから」
顔をあげると、諦め顔で私を見る実弥さんと目が合う。
「ありがとうございます。がんばります!」
「じゃあ、まずは両手で浴衣の端の方を持てェ。そして、先に右手の方を体の前に。足元の長さを調整しながらだ」
「はぁーい!両手で持って、右手を前に…」
両手で着物の端を持ち、足元の裾と右手と…と考えながらしていると、
「おいッッ!!!」
「へっ?」
突然の大声に驚き変な声が出る。着ることに集中しすぎて、前が全開になっている。そりゃ注意されるよね。
えぇ、下着は着てません。さっき洗いましたもん。
だけど、さすがに四十にもなれば裸の一つや二つ見られたところでそんなに動揺しない。さっきまで遊女にでもなるかと考えていたのだし。
ただ、こんなおばちゃん体型を実弥さんに見られたことは恥ずかしい。
「ひゃあ!ごめんなさい!!変なもん見せちゃいましたね。あー本当ごめんなさい。色々と考えながらすると、やっぱり疎かになりますね」
後ろを向き、浴衣を整える。
後ろから実弥さんのため息が聞こえた。
申し訳ないなぁ。
だって、おばさんの体を見せられても、実弥さんにとっては災難でしかないし…、気の毒すぎて本当申し訳ないだ。