第12章 お出かけ
【実弥side】
そうだ、紅の事だ。
何で隣町に行くだけなのに、紅をしていくのか聞きたかっただけだ。なのに、何を勘違いしたのか、似合わないと思ったようだ。
だが、落としてから行くと聞き、安心した俺がいた。
何でだ?何で俺が安心しなきゃいけねぇんだァ。そんなことを考えている自分に苛つきが増す。
ノブの化粧した姿を初めて見た。似合っているとは思う。いつもと違って、赤い紅から目が離せなかった。ノブから目が離せなかったんじゃない。紅からだ!
なんで今日は紅をしていくんだ?誰かに見せたいのかァ。見せたい奴が隣町にいるのかよ。気になる奴でもいるのかよ。
そんなことを考えていたら、急にノブから話しかけられ、我にかえる。
「実弥さん、教えてくれてありがとうございます!早速落としてきますッ」
何故かお礼を言われ、苛ついていた自分が、気持ちが収まっていくのがわかる。ノブはそう言えばすぐに行ってしまった。
ふと冷静になってから、考える。あれはただの言いがかりだァ。
紅は似合ってた。ただ、紅をさしたノブが嫌だったんだと気づく。
だが、何故嫌だったのかは、全く分からねぇ。何でそんな風に考えたのかも分からねぇ。
ただ、嫌だった。それだけだ。
俺の勝手な考えのせいで、ノブは紅を落としに行った。少しだけ、罪悪感が広がる。
ふと、目をやれば、流し台にある、皿に目が留まる。もうそのあとは体が勝手に動いた。少しだが、ノブの仕事を手伝おうと皿洗いを始める。