第12章 お出かけ
【実弥side】
「そんなに隣町に行くのが楽しみなのかァ」
鬼狩りから帰れば、ノブはもう起きていて一通り家事を済ませていた。ただ隣町に行くだけなのに、何から何まで終わらせてから行くつもりのようだ。ノブはずっと忙しなく動いている。
それだけじゃない。
いつもと顔が違う。化粧だァ。お館さまの所に行く時すら紅さえつけていかなかった奴がだぞ!隣町に行くってだけで、つけるのかァ。どれだけ楽しみなんだァ。
そんな姿を見ていて、朝食を食べている時につい言葉がでた。
「自分ではそんなに行きたいとは思ってなかったんですけど…どうも、違ったみたいです。とっても楽しみなようです」
ほんのりと頬が赤みを帯びながら答えるノブを見ると、なぜか段々と苛ついてくる。
「いつもと顔が違う」
吐き捨てるように言う。
「えっ?そうですか?楽しみ過ぎて、顔が緩みっぱなしかもしれませんね」
「いや、いつも顔は緩みっぱなしだろォ」
まぁそれもそうだが、自分が意図していた答えと全く違う返答に、呆れながら突っ込めば、やっとノブも気づいたようだった。
「いつも緩みっぱなしことですかッ!もうっ。え?何か違いますか?うーん。あぁ、紅かな。………あ~恥ずかしい」
「あ……あぁ」
ノブは怒涛のような喋りで、結局一人で勝手に答えをだしちまいやがった。あまりにも一人で完結してしまったから、返事も曖昧にしか返せなかった。