第12章 お出かけ
蜜璃ちゃんから手紙を貰ってから、あっと言う間に時間が過ぎた。
時間は変わらないから、自分の気持ちでそう感じているだけなのだろうけど。分かっているけど、早かった。
やっと、今日、隣町にいけるのだ。
年甲斐もなく、昨日はなかなか寝付けず、朝は早く目が覚めた。遠足の前の子どものようだ。
違う着物に袖を通せば、より気持ちは昂る。以前、あまねさまから貰った紅が目に入り、せっかくだからとつけてみた。
そんな状態で朝からフル活動。やるべき仕事は終わった。
「そんなに隣町に行くのが楽しみなのかァ」
鬼狩りから帰ってきて、私のバタバタした姿を見て思ったようだ。朝食を食べているときに、呆れ顔で言われた。
「自分ではそんなに行きたいとは思ってなかったんですけど…どうも、違ったみたいです。とっても楽しみなようです」
ちょっと恥ずかしいが、本当の事だから正直に答える。
「…いつもと顔が違う」
「えっ?そうですか?楽しみ過ぎて、顔が緩みっぱなしかもしれませんね」
「いや、いつも顔は緩みっぱなしだろォ」
「いつも緩みっぱなしことですかッ!もうっ。え?何か違いますか?うーん。あぁ、紅かな。あまねさまからいただいた紅を少しだけさしましたけど、なかなか化粧は慣れてなくて。もしかして変ですか?変ですよね。やっぱり似合わないですよね。あ~恥ずかしい。実弥さんに言われなかったら、そのまま行くとこでした。後で落としますね。あ~恥ずかしい」
「あ……あぁ」
実弥さんが歯切れの悪い返事をしたのも、ほとんど耳に入っていなかった。
それよりも、恥ずかしさでその場から逃げ出したくて仕方なかった。
さすがに浮かれすぎだ。穴があったら入りたい…
蜜璃ちゃんとお友達になれたからといっても、私は蜜璃ちゃんと同じ年齢ではない。おばちゃんが若作りをしたところで、恥ずかしいだけだ。
実弥さんから指摘されるのは恥ずかしすぎるが、そのまま行ってしまう方がもっと恥ずかしい。
それこそ、穴があったら入りたいッ!!状態だ。