第12章 お出かけ
「はぁ?普通は、何か感想でも言ってもらった方が嬉しいんじゃねぇのかァ?」
そう言われればそうなんだが、と思いつつ、自分の考えを伝える。
「まぁおいしいって、言ってもらえるのが一番ですけど。そこはね、なかなか人によっては言わないじゃないですか?無理に聞くのもどうかな、と思ってて。だから、黙々とでも、どんどん食べてくれるってことは、おいしいと思って食べてくれてるんだろうと、勝手に思ってるんです。美味しくなかったら、箸が進まないでしょうし。全部食べてくれたり、おかわりとかしてくれると、尚更嬉しいんですよね」
「そんなもんかァ?」
納得いかないような顔だ。
でも、声に出しての感想は、なかなかもらえるもんじゃない。煉獄さんだったら、その心配はないのだろうけど。
口数の少ない人は、何も言わないのだ。
だからこそ、感想を相手に求めすぎてはいけない。食事がプレッシャーに、ストレスになってしまうからだ。
よく、新婚当初は旦那に何度も何度も聞いていた。それがストレスになって、家で食事を取るのが嫌だと言われた時は、おいしくないと言われた時よりショックだった。
だから、それからは感想は極力求めない。
相手の姿で勝手に私が想像するようにしたのだ。
「そんなもんですよ。なかなかおいしいって、声に出しての感想を求めちゃダメなんですよ。んじゃ、逆に聞きますけど、おいしいですか?」
「ん?あぁ、旨い」
突然の質問にやや驚きつつもすぐに答えてくれる。
実弥さんのご飯の食べ方というのか、傾向というのか、そこは旦那に少し似ている。
黙々と食べるとこや、聞けばすぐにおいしいと言ってくれるとこ。あとは、本当においしいと思う時には、声が出るとか。
「それなら、良かったです。まぁ、実弥さんは本当においしい時は旨いって言ってくれてるので、それはそれで嬉しいんですよね~」
「はァ?俺は言ってねぇぞォ!」
声を少し荒げながら、睨まれる。心外だ、ともいった表情だ。まさかとは思うが、気づいてなかったのか。