第12章 お出かけ
それから二週間程が経った頃、蜜璃ちゃんからその手紙が届いた。
蜜璃ちゃんとはあれから会えてなくて、ずっと手紙のやり取りをしていた。蜜璃ちゃんは手紙を書くのが好きなようで、すぐに返事は来る。
私はあまり日常が変わらないから、書くことと言えば実弥さんや甘味屋さんのこと。あとは縫い物の事だ。あまり話題がない。
でも、蜜璃ちゃんはそれに何倍もの感想を書いてくれたり、日々の出来事を書いてくれている。
最近は伊黒さんの事が多くて、好きなんだろうなぁとほっこりしているところだ。
そんなやり取りを続けていたのだったが、今日はいつもと内容が違ったのだった。
『今度、お休みが取れるから、一緒に隣町の洋食屋に行かない?』
以前、蜜璃ちゃんが美味しいと言っていた、洋食屋に一緒に行こうと誘ってくれたのだ!話を聞いてから
一度隣町に行ってみたいと思っていたけど、方向音痴の私は行く術がなかった。
蜜璃ちゃんが一緒に行ってくれるのなら、大丈夫だろう。
早速手紙を片手に実弥さんの部屋に行く。
「実弥さん、ちょっとよろしいですか」
「何だァ」
そう言い、襖が空く。
「明後日ですが、蜜璃ちゃんと隣町まで行ってきてもいいですか?今手紙がきて、隣町の洋食屋さんに連れてってくれるそうなんです」
「何で俺に聞く?行きたいなら行けばいいだろォ」
実弥さんは呆れ顔だ。
「いや、さすがに勝手に行く訳にはいかないでしょ。色々あって、居候させてもらってるんですし」
「そうだなだァ。まぁ、甘露寺はあれでも柱だァ。昼間だし、大丈夫だろ。一番心配なのはァ、迷子だなァ。お前が勝手にフラフラ行かなきゃ、いいがなァ。絶対迷子になんかなるんじゃねぇぞォ」
ニヤニヤしながら言われる。
「はい。気を付けます…」
そこは気を付けないといけない。初めての場所だから、色々よそ見をしてしまうだろう。自分の事だ、よく分かる。そしてだいたいふらふら気になるところへ勝手に行って、旦那に怒られていた。
蜜璃ちゃんから、しっかり離れないようにしないと!
「お返事書いてきます…」
呆れられている実弥さんの視線が痛い。早々に部屋に戻ったのだった。