第11章 炎柱
【実弥side】
ノブとのコトがあってから、数日経った。
最初こそ気まずさがあったが、もう変わりない。
稽古中、突然、爽籟のけたたましい鳴き声が聞こえて来た。その後、こう続いた。
「炎柱、煉獄杏寿郎、上弦ノ鬼トノ戦イデ、瀕死ノ重症。瀕死ノ重症」
…炎柱煉獄杏寿郎、上弦の鬼との戦いで、瀕死の重症…
上弦の鬼…
煉獄でも上弦の鬼には負けるのか…
だったら俺が…
「醜い鬼どもは俺が殲滅する…」
そう思い、呟く。
ふと、洗濯物が目に入る。
なぜかノブが泣いていた。そのまま屋敷に上がったが、なかなか戻って来ない。
何であいつが泣いてるんだ。
そう思うと、何かモヤモヤしたものが胸の中に出てきた。
何だ、これは。
自分でもよく分からない症状に苛立ちが募る。それを振り払うかのように、稽古を再開する。
ノブが戻ってきた。稽古は続けながら見れば、もう泣いてないようだ。それを確認すると、モヤモヤしたものはなくなってしまった。
何だったんだァ?そう考えるが、答えは出ない。
それらの気持ちを振り払うかのように、また稽古を続ける。
煉獄が上弦の鬼と戦い、重症を負ったとしても、俺の鬼狩りは変わらない。今日も時間になれば行くだけだァ。
「行ってらっしゃいませ」
「行ってくる」
このやり取りにも慣れたもんだ。
俺が、鬼を殲滅させる。
そう思い、今日もいつもと変わらぬ暗闇に、入っていった。