第11章 炎柱
あれだけ昼間泣いたのに、また、涙が溢れる。
煉獄さんが生きているという事実と、お館さまの優しさにだ。
自分が関わったことで、私の知っている内容ではなくなってしまった。何度も何度も考えているが、本当にこれで良かったのだろうか、と。
でも、辿り着く答えはいつも同じだ。
私がここに来た時点で、もう物語は変わっている。
何もしないよりは、何かして後悔した方がいい。
何度も自分の中で自問自答した。
自分が動くことで、話が変わってしまう。もしかしたら、無惨を倒せないかもしれない。生きていた人が、実弥さんが死んでしまうかもしれない。
だから、このまま、何もしない?煉獄さんが死ぬのを知ってて、そのままにしておく?……
頭の中は堂々巡りだった。
だけど、どうしても煉獄さんには死んでほしくない。その気持ちが強かった。
諦めてこのまま見守ろうと思ったことは何度もあった。だけど、結局煉獄さんは?死んでいいのか?と、思い直した。
人が死ぬのが分かってて、それをそのまま見過ごすなんて、私にはできなかった。
だからこそ、理由をつけた。
…私がいる時点で、もう物語は変わっている、と。
そう思えば、いや、実際事実なんだけど、気持ちが楽になった。
それにお館さまに話せば、うまく取り計らってくれると思ったからだ。私みたいに小さな部分だけを見るんじゃなく、全体を見て動くか動かないか、判断してくれると思ってた。
そんな判断をさせてしまったのは、気がひける。
でも、私には煉獄さんを助ける術を全く持っていなかった。お館さまに頼る他は選択肢としてなかったのだ。お館さまにとっても、情報は重要なのだと思う。
でも、結果的にはお館さまに頼って、正解だった。
物語の大筋は変わることなく、煉獄さんの命は助かったのだ。
あの三人がどうなるのか、気になるところだけど、それはこれからの経験や、生きていれば煉獄さんが導いてくれるだろう。
上弦の鬼との戦いで、自分達の実力を思い知っただろうから…三人が三人であるのなら、しっかり成長できると思う。
いつか三人にも会えたらいいなぁ。
そう思いながら、手紙を机の引き出しに入れ、筆を出す。お館さまに御礼の返事を書こう。
そう思う頃には、もう涙は止まっていた。