第11章 炎柱
手紙には今回の無限列車での事が書かれていた。
お館さまにしては、何だか脈絡も纏まりもない文章になっている気がするけど、それは私の事を考えての事だろう。
私が話した事は、二人だけの秘密だ。
それを手紙に書くわけにはいかない。でも、どうしたのか、私は知りたかったし、その事をお館さまは分かっていたのだろう。こういう形で教えてくれたのだ。
手紙は誰かに見られる可能性がある。
だからこそ、こんな内容の手紙なのだ。
無限列車の事が気になっているのに、内容は煉獄さんの事だけだ。しかも最後だけ。
しのぶさんを行かせた理由も書いてるが、私なんかにわざわざ書かなくてもいいことだ。
どうやって煉獄さんが助かったのか、詳しく書いてくれている。
だけど、やっぱり、私に伝えたかったのは、この部分だろう。
『しのぶが行かなかったら、杏寿郎は死んでいたよ。派遣させるのが少し遅かったけど、何とか間に合った。上弦の鬼も、あと少しのところで逃げられた。』
『大丈夫だよ、ノブ。杏寿郎は死ななかった。日常も変わらないだろう。安心していいよ。』
日常は変わってない。物語が変わってないと言いたいのだろう。私が話した内容で、変わっているのは、煉獄さんが生きていること。
しのぶさんの派遣も原作からは変わっていることだけど、これは煉獄さんを生かすために、お館さまがしたことだから煉獄さんが生きていることに、含まれるだろう。
上弦の鬼も追い詰めたけど逃げられた。
死者は出ていない。
煉獄さんは瀕死の重症を負った。
…だけど、たまたまその場にしのぶさんがいたから助かった。
良かった。
話をしたけど、お館さまが動いてくれるという保証はなかった。だから、煉獄さんが生きていると知ったとき、本当に嬉しかった。
だけど、そのあとは疑問が出てきた。
どうやって、助けたのか、と。
それをお館さまは手紙という形で、私に伝えてくれたのだ。私は何も知らないと言う前提でだ。
だから、お館さまからの手紙なのに、何だかおかしな部分があるのだ。
『変わっていない』
それを伝えてくれているのだ。
たぶんそうだと思う。そうでなければ、こんな言い回しで、脈絡なく出てくる訳がない。
あれは、お館さまの意図した部分だと思う。
私が心配しないようにと、優しさだ。