第11章 炎柱
木蓮が届けてくれた手紙に目を落とす。あまねさまが書いたのであろう。とても綺麗な字で
『三井 ノブ様』
と書かれている。
ゆっくりと、開き、読み進める。
『ノブ、元気にしているかい。この間はせっかく来てくれたのに、すぐに帰ってもらってすまなかった。おかげで子どもは次の日には元気になったよ。
さて、杏寿郎のことは聞いただろう。瀕死の重症を負ったが、生きているよ。今はまだ意識が戻っていないけど、峠は越えた。一時は危なかったけどね。
もう少しすれば、必ず目を覚ますし、元気になるだろう。
どうしてこうなったか、気になってるだろう。
当初、この案件は、柱を一人、杏寿郎だけを行かせる予定だったんだよ。でも、一般人も多いからね、しのぶにも後から行ってもらったんだよ。
合流できたのは、夜明け直前にはなったようだけどね。
上弦の鬼が出てくるなんて、予想外だったけど、杏寿郎が一命を取り留めたのは、しのぶがいたからだよ。
相手の鬼もずいぶんと二人で追い詰めたようだけど、逃げられてしまったよ。
杏寿郎はすぐに手当てをしないと、死んでしまうような怪我だったんだ。だけど、すぐにしのぶが手当てをしたから、何とか命を取り留めることができた。
しのぶがいたからできたことだよ。本当に良かった。
しのぶが行かなかったら、杏寿郎は死んでいたよ。派遣させるのが少し遅かったけど、何とか間に合った。上弦の鬼も、あと少しのところで逃げられた。
列車の事故だ。かなりの怪我人がいたようだけど、隠にも早めに行ってもらってたから、死者は誰も出なかったよ。
これが、今回の事の顛末だよ。ノブは気になってるだろうと思って、早々に手紙を書いたよ。
大丈夫だよ、ノブ。杏寿郎は死ななかった。日常も変わらないだろう。安心していいよ。
長くなってしまったね。また、屋敷に遊びにおいで。私もあまねも、子ども達も、楽しみにしているよ。
産屋敷耀哉』