第3章 お屋敷
やはりお風呂は、気持ちがいい。一日の疲れが掛けた水と共に流されていく感じだ。
そして本当に真っ黒だった。
洋服や手足が汚れているのは見えていたけど、顔もかなり汚れていた。
鏡がないから詳細はわからないが、何度洗っても水が汚れていて、流石に笑ってしまった。
湯船に入り、一息つく。
現代のお風呂とは全く違う。
でも、おばあちゃん家のお風呂になんとなく似ていたので、そんなに違和感なく入ることができた。
この後実弥さんも入るだろうし、温まったところで湯船からあがった。
お風呂から上がってからが、戦いだった。
着替えを準備してくれていたのだが、男物の浴衣。
実弥さんのかなぁと考えるだけで、ニヤニヤがとまらない。
だが、我に返り、目の前の浴衣を見る。
これはどうみても男物。長い。羽織っただけで足元はかなり引きずっている。
まだ女性物であればなんとかなったのかもしれない。いや、ならないか。夏祭りで着たことあるけど、誰かに着付けてもらったから自分で着たことはない。
それだけじゃない。
下着はどうすればいいのだろう。今日着ていた物は洗ってしまい、まだ乾かない。用意されているのは浴衣だけだから、これだけなんだろう。
どうなんだ?大正時代って、どうしていたんだろう?
本の中には出てこなかった。
真顔になったり驚いたり、ニヤニヤしたり、一人で百面相だ。
あれこれ考えていたけど、結局いくら考えたところ浴衣が着れる訳ではない。
一番は聞くことだ!
そう思って、風呂場を後にした。