第3章 お屋敷
「風呂が沸くまで、座って待ってろォ」
部屋の中に押し込まれた。
部屋は客間と言うだけあって、とてもきれいにされている。机の前に座り、肘をつく。
「一体何だったんだ、今日は…」
独り言が広い部屋に響く。
今日あったことや、今自分の身に起きていることを考えようとしたが、もう何も考えられなかった。
「疲れすぎてる…今日はもう考えられない!」
また大きな独り言を言い、畳に大の字になる。
自分の知っている天井じゃない。
そのことが、今の現実なんだと思わさせた。
「あー、寝っ転がってたら寝ちゃう!!」
また大きな独り言を言い、立ち上がる。
止まると寝てしまいそうなので、客間の中をウロウロとし始める。
独り言を呟きながら全く落ち着かない私は、端から見たらおかしな人だろう。
「おぃ。座って待ってろって言っただろうがァ」
呆れ顔で実弥さんが部屋に入ってくる。
「座ってたんですが、止まると寝ちゃいそうで。歩いてました!」
「本当よく分からない奴だなァ、お前は。風呂が沸いたから、早く入ってこい!廊下を出て突き当たりを右にいけば分かる。着替えと手拭いは置いておいたから、使え。あと、突き当たりを左に行けば厠だ」
「はい!何から何まで本当にありがとうございます!行ってきます!」
いそいそと部屋を出る。
「おい、風呂場は反対側だぞ」
「あぅッ!」
間違えた~ッッ!
方向音痴がいきなり発揮されてしまった。
あまりにも恥ずかしくて、回れ右して小走りで行く。
あー恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。穴があったら入りたい。
おっ、これは連獄さんか密璃ちゃんが言ってた台詞だ。
って、そんなことは今はどうでもいい。
「ハハァ。本当得体の知れない奴だが、憎めねぇなァ」
実弥さんが呟いた声は、小走りで駆けていくノブには小さすぎて聞こえなかった。