第10章 秘密 *
「……ノブ、お前は勝手過ぎる。入るなと言ってるのに勝手に入ってきて、出ていけと言ってるのに居座り、挙げ句の果てには何をしたァ」
「……ええ、実弥さんのおっしゃる通りです」
そう言われると、ぐうの音も出ない。実弥さんの顔が見れず、俯く。
「お前には驚かされてばかりだ。変なことは覚えてるんだなァ」
段々と自分のしたことが恥ずかしくなってくる。一時の気分で、何をしてしまったのだろうと、自己嫌悪に陥り、全く顔をあげられなくなる。
「だがなぁ、ノブ」
そう言うと、頭の上に、ポンポンと二回優しく触られ、手が載せられる。
「一回しか言わねぇぞォ」
そう言うと、載せられていた手が私の顎の辺りを触り、顔をあげられる。所謂顎クイってやつだ。
目の前に実弥さんの顔があり、じっと見つめられている。恥ずかしすぎて顔を背けたいが、顎を持たれていて動けない。
「今までで一番気持ちが良かったからなァ」
そう言われ顔が赤くなるのが分かった。実弥さんも言い終わると、恥ずかしくなったのか、すぐに手を離し顔は横を向く。耳が赤くなっている気がするが、そこは指摘されたくはないだろう。
実弥さんらしくない行動だが、私の事を思っての事だと思うと、嬉しさも込み上げてくる。
このまま抱きつきたい気持ちになるが、そこは我慢だ。
「実弥さんが気持ちが良かったのなら、私はとても嬉しいです」
自然と顔がにやけてしまう。
「また、溜まったらしてあげますから、いつでも言ってくださいね」
「なっ…」
「お疲れの所すみませんでした。お邪魔しました!じゃ、実弥さん、おやすみなさい」
言い終わると、立ち上がり部屋から出ていく。襖を閉める時に、実弥さんから声がかかる。
「ノブ、ありがとうな」
「どういたしまして。またいつでもどうぞ」
そう返事を返すと、襖を閉め、部屋に戻る。目は冴えているが、時間が早い。布団に少しだけ横になり、さっきの事を思い出す。
我ながら恥ずかしすぎる。何をしてんだか、と自己嫌悪に陥りつつも、実弥さんの初めて見る姿をゆっくりと思い出すのだった。