第10章 秘密 *
何度も目が覚めるとなかなか寝れないようだ。目を閉じていても、なかなか眠たくなる気配がない。
どうしたものか。
もういっそのこと起きてみるか、とも考える。
「…うッ…」
突然音が聞こえた。物音ではなく、実弥さんの声か。
「…ふぅ………ウッ………」
間違いなく実弥さんの声だ。
どうしたんだろう。トンと言う音とカチャンと皿同士がぶつかった音がした。
実弥さんが机にどこに当たったのだろう。
「……ふぅ……」
どこか悪いのだろうか。
昨日の実弥さんの様子を思いだし心配になる。
「……くッ…………………ハァッ………」
苦しそうな声に、さらに心配は増す。
やっぱり体調が悪いのだろうか。熱でも出たのか。まさか怪我してきてないよね。
悪い方にばかり、考えがいく。
「………ふぅ………」
苦しそうな声が続く。
居ても立ってもいられず、布団から起き上がる。
「……ハァッ………」
まだ声はする。お館さまのお子さんも熱が出ていた。何か風邪でも流行っているのかもしれない。怪我をしてれば、それこそ手当てをしないと。
実弥さんは自分の事は後回しになってしまう。
そう考えると、すぐに立ち上がり部屋から出て、実弥さんの部屋の前で声をかける。
「実弥さん、大丈夫ですか?苦しそうですけど」
私の突然の声に驚いたのだろう。また、机にぶつけた音と皿がぶつかる音がする。
「…何でもねェ。大丈夫だァ。さっさと寝ろッ!」
「いや、そんな訳にはいきません。また怪我とかしてるんじゃないですか」
「怪我はしてねェ。ほっとけッ!」
苛立っているのが、分かる。でも、私もここで引くわけにはいかない。
強行突破だな。
そう覚悟が決まると、行動するのは早い。
「ほっとける訳ないでしょ。苦しそうな声が聞こえるんですから。はい。失礼しますよ」
そう言い襖を開けてズカズカと部屋に入っていく。
「…おいッ!コラッ!!何勝手にッ……」
その言葉が終わる頃には実弥さんの元に到着していた。