第9章 再びお館さまの元へ
【実弥side】
「怖くないですよ。でも、鬼狩りに行くときの実弥さんの雰囲気は怖いけど、それももう慣れましたし。普段の実弥さんは優しいですし。そもそも、怖かったらこんなに喋ってませんよ。いつも言ってるでしょ、私は実弥さんのこと、大好きですから」
ノブの答えに何故か安心した事に違和感を覚える。だが、それもノブの戯れ言にすぐに埋もれてしまう。どうしたら、そういう考えに行き着くのか…。頭を抱えながら、言葉を吐き出す。
「…また、それか」
「あ、でも、やっぱり怒られたら怖いです~。だから、怒らないで下さいね」
何も考えてないんだろう。ノブはただ笑っている。
「怒られるような事をするからだァ!」
「私は大丈夫ですよ、実弥さん」
突然話の流れとは違う言葉を発する。俺の目をしっかり見て、笑ってはいるがさっきの何も考えていないような笑い方とは違う。
だが、突然の話の変化に、理解ができない。
「…何がだァ」
「私はいつも実弥さんの味方ですよ」
あまりにもまっすぐな笑顔と言葉にどう返したらいいのか分からず、返事もしないままにその場から部屋に戻ってきてしまった。俺が聞いたが、なぜそんなことをわざわざ言うのか理解できなかった。
だが、そう言われれば、嬉しくないわけがない。
「うるせェんだよ」
そう思ってしまったことを隠すかのように呟いた言葉は、誰にも聞かれることはなく部屋に吸い込まれていった。