第9章 再びお館さまの元へ
【実弥side】
「はァ~ッ?何でそんな事になってんだァ?」
「いや、私に聞かれても…でも、お館さまが火に油を注いだ感じにはなってますね」
「はァッ?」
また、理解できないない返答に、ただ声が漏れる。
「いや、今日も実弥さんの事を頼む~とか、実弥さんの大切な人だから~とか、言ってるんですよ、私の事。しかも、それを私に対してじゃなくて、隠の方に言ってたんですって!お館さまがそんな風に言うから、柱の方だけじゃなく、他にも広がってるんですよ」
「……」
柱合会議での事を思い出す。
あの時もわざわざあの場で言う必要はなかったのでは、と思っていた。だが、お館さまのことだから、あまり深くは考えないようにしていた。
「ほら、何か思い当たる節があるんでしょ?」
「…ねぇ、と言いたいとこだが……」
一度そう考えてしまうと、はっきりとは言いきれなくなってしまった。
「ほら。なので、当分、と言うか、結構長い間ずっと言われ続けると思いますよ。私はあまり鬼殺隊の人に会わないけど、実弥さんはいつも会うでしょ?」
そうは言うが、そんなことを言われたのは甘露寺位だ。
「いや、でも俺は柱の奴ら以外には言われたことはないぞォ」
「……それは、実弥さんには面と向かっては言いづらいんでしょうね」
ノブは少しだけ目を逸らしながら答える。
「アァッ?何でだァッ?」
「いや、そうやって大声で威嚇されるでしょ?実弥さんは普通でしょうけど、他の隊員とか隠の人はちょっと…怖いでしょうね。柱の方々のように親しく話す、とかないですし。だからですよ。否定もされないから、とりあえず噂だけが勝手に広がってるんでしょうね」
怖い…か。それは間違いねェ。自覚はある。
だったら、ノブはどうなんだ。
人からどう思われようと全くどうでもいいが、ふと思う。
「………お前は、俺が、怖いか?」
自分でも驚くほど、小さな声だった。
自分で聞いておきながら、気まずくなり、顔を背ける。そんな俺に気づいているのか、すぐに答えは返ってくる。