第9章 再びお館さまの元へ
【実弥side】
今日は眠たかった。鬼狩りから帰ってからのことも曖昧だ。
目をさますと、もう昼はとうに過ぎていた。もうノブはいなかったが、代わりに手紙があった。お館さまの手紙にも書いてあったが、今日は泊まりのようだ。
一体何で呼ばれたのか、気になってはいたが、全く聞く余裕もなかった。
目が覚めてからも、眠たさが残っていたので、部屋で過ごしていたが、外から声が聞こえた。
「ノブ様、ノブ様、お屋敷に着きましたよ。起きてください!」
泊まりだったはずだが、戻ってきたのか。いや、それよりも、あいつは寝てるのか。
何か話している様だが、声が小さく聞き取れない。立ち上がった所で声がした。
「後藤さん、本当にありがとうございました!あ、斉藤さんにもよろしくお伝えくださいね」
勝手口の扉が開く音と同時に声が響く。
「ただいま戻りました~!」
部屋から出てノブに話しかける。寝ていた事が気になりつつ、何故予定が変わったらのか尋ねる。お館さまに失礼なことをしてたら、大変だァ。話しかけながら、台所まで出てくる。
「ん?泊まる、って言ってなかったか?…まさか、お前、お館さまに失礼なことでもして追い出されたのかァ」
「違いますよ。お子さん、お熱が出たみたいで。それで帰ってきたんです。失礼なことはしてませんよ。反対に意地悪された位なんですから」
ノブの言っていることが分からねェ。なぜお館さまのお屋敷に行って意地悪されるんだァ!理解できねェ!
「はァ?誰が意地悪するんだァ?」
「いや、お館さまでしょ」
「アァッ!!お前、何を言ってやがる?お館さまがそんなことを言う筈ないだろうがァッ!もっとまともな嘘を言いやがれッ!」
即答するノブに、イラつきを隠せず、怒鳴るようにして言う。そんな俺の言い方には全く動じず、反対に俺の方をしっかり見据えて、早口で口答えされる。
「いや、本当ですって!いたずらっ子ですよッ!ってか、隠の人にも実弥さんの嫁って言われたんですけど…どんだけ噂が広がってるんですか?」
なんなんだァ。お館さまのこともだが、嫁の話が出る。全く理解ができず、ノブを睨み付ける。