第9章 再びお館さまの元へ
「ほら、何か思い当たる節があるんでしょ?」
「…ねぇ、と言いたいとこだが……」
いつもの歯切れの良さはない。
「ほら。なので、当分、と言うか、結構長い間ずっと言われ続けると思いますよ。私はあまり鬼殺隊の人に会わないけど、実弥さんはいつも会うでしょ?」
「いや、でも俺は柱の奴ら以外には言われたことはないぞォ」
隠や隊員の気持ちが分かった。
「……それは、実弥さんには面と向かっては言いづらいんでしょうね」
「アァッ?何でだァッ?」
「いや、そうやって大声で威嚇されるでしょ?実弥さんは普通でしょうけど、他の隊員とか隠の人はちょっと…怖いでしょうね。柱の方々のように親しく話す、とかないですし。だからですよ。否定もされないから、とりあえず噂だけが勝手に広がってるんでしょうね」
「………お前は、俺が、怖いか?」
急に声が小さくなり、ポツリと聞かれる。気にしてるのか、この人は。横を向く実弥さんが、どうしようもなく可愛らしく見えてくる。
「怖くないですよ。でも、鬼狩りに行くときの実弥さんの雰囲気は怖いけど、それももう慣れましたし。普段の実弥さんは優しいですし。そもそも、怖かったらこんなに喋ってませんよ。いつも言ってるでしょ、私は実弥さんのこと、大好きですから」
「…また、それか」
「あ、でも、やっぱり怒られたら怖いです~。だから、怒らないで下さいね」
笑いながら答える。
「怒られるような事をするからだァ!」
「私は大丈夫ですよ、実弥さん」
しっかりと実弥さんの目をみて、伝える。話の流れからは違うけど、私は実弥さんの事を怖がったり嫌ったりしてないことが伝わればいい。
「…何がだァ」
「私はいつも実弥さんの味方ですよ」
返事はせず、ふいっと顔を背けて、部屋に戻る実弥さんを見つめる。
こういったやり取りをするだけでも、私は幸せだ。実弥さんも少しは私とのやり取りが楽しいと思ってくれるといいのだけど…
まぁ、そんな、淡い期待はしないでおこう。
そう思いながら、自分の部屋に戻った。