第9章 再びお館さまの元へ
「ふふ。それでもいいと私は思うんだけどね。まあ、それは置いといて、実弥の事はノブに任せるよ。あの子は自分の事は顧みない子だから。本当は優しい子なんだけどね。
大事にしたい気持ちはあるのに、どうしていいのか分からないんじゃないかと思うんだ。ただ話を聞いてあげるだけでもいいと思うんだよ。あの子もずいぶんと成長しているようだから。大切な人がいるだけで、より強くなれると思うし、気持ちは言葉にしないと伝わらないんだ。だからこそ、ノブが助けてやあげてほしいんだよ。私ができればいいのだろうけど、できそうにないから…」
最初は何の事かと思ったが、たぶん、玄弥くんの事だと思う。
「……玄弥くんの事ですか?」
「ノブがそう思うのなら、そう取ってもらっても構わないよ」
笑顔でお館さまは答える。うん、どう考えても、そうとしか取れない!
「分かりました!何ができるか分かりませんが、気にはなってた事ですから。でも、実弥さんが怒って、お屋敷から追い出されたら、ここで生活させてくださいね」
「ははは。分かったよ。追い出されたら、ここに帰っておいで」
「あと、それに関してお願いがあったら、すぐに木蓮を飛ばしますんで、よろしくお願いしますね!耀哉さまッ!!」
若干ふて腐れぎみに言いきる。
「おやおや、怖いねぇ」
「もう!誰がそんな風にしてるんですかッ!」
打っても打っても響かない感じに、弱冠イラつきながら答える。お館さまはそれも楽しんでる感じだ。
「失礼します。準備ができましたよ。あら?ノブ、どうしたの?」
「あまねさまー!耀哉さまがいじわるです」
そう言いながらあまねさまの方を見る。
「あらあら、意地悪はいけませんね、お館さま」
「おや、私は意地悪を言ったつもりは全くないんだけどねぇ」
お館さまはいつもの笑顔で答える。
「だそうよ、ノブ。仕方ないわね」
「そのようです」
あまねさまと顔を見合せ、ふっと笑う。
一連のやり取りにちょっと選択を誤ったかもしれないと思いつつも、二人の違う一面を見れて満足している自分がいた。