第9章 再びお館さまの元へ
「お館さま!私と話す時位は、お館さまは少しだけ忘れませんか?」
「お館さまを忘れる?どういうことだい?」
「産まれた時からお館さまになることは決まってて、時が来たらお館さまになって、今はお館さまとしてしっかり使命を果たされてる。でも、お館さまじゃなく、耀哉さまは、あまねさま以外の人に出せてますか?」
「……そうだね。あまね、だけだろうね」
珍しく、お館さまの返事が遅かった。
「とっても大変な使命を果たされているのは分かっています!でも、お館さまに隠れている、耀哉さまも、もう少し年齢相応に過ごす時間があっても、誰からも咎められないと思うんです。そういう時間があるからこそ、使命に立ち向かっていける力ができるんじゃないかと、思うんです」
実弥さんだけじゃない。鬼殺隊の人達は、まだまだ若いんだ。だからこそ、自分というものを大事にして欲しい。おばさんだからこそ、母親だからこそ、そう強く思うことだ。
「ありがとう。ノブ。私のことをそうやって一個人として考えてくれて、お館さまとしてではなく、耀哉としては見てくれて、私はとても嬉しいよ。最近はお館さまとしてずっと生活しているから、自分の中の耀哉の部分はほとんどいないんだ」
「やっぱり…そうですよね…」
予想はしていたが、お館さまからの答えに気持ちが落ち込んでしまう。
「でもね、ノブと話していると、耀哉の部分が少しだけ出てきていると思うんだ」
「本当ですか?」
「ああ。何だろうね、ノブが未来から来たからなのか、年齢が四十だからなのか、ノブという人柄だからなのか…何がそうさせるのかは分からない。だけど、ノブと話しているとね、色々と考えることがなくて、楽しいんだよ」
理由はどうであれ、色々考えずに楽しいと思えることはいいことだ!
「それは良かった。私もお館さまとお話するのは、とっても楽しいです。また、遊びに来させてもらってもいいですか?」
「もちろん。私もノブと話したくなったら、呼ぶけどいいかい?」
「はい!」
二人で向かい合って笑い合う。
そこでふと考えていたことをお館さまに打ち明ける。