第9章 再びお館さまの元へ
「でも、本当に大丈夫でしょうか?私が話してしまって、本当に未来が変わってしまったら…」
「ノブ、落ち着いて。今から私に話してくれるのは、ノブがその未来を変えたいと思ってるから、話してくれるんじゃないのかな?変えたいと思ったから、私に話そうと思ったのだろう」
そうだ。私は無限列車の、煉獄さんの死を止めたいんだ。それはもう、未来を変えたいということだ。覚悟を決め、再度話し出す。
「すみません。取り乱してしまいました。そうなんです。私の知っている、近い未来を変えたいのです。でも私にはその術がありません。だから、お館さまにお話に来たんです」
「うん。分かった。教えてくれるかい、近い未来を」
一度大きく息を吸い、目を閉じ、気持ちを落ち着かせる。ふぅっと息を吐き終わったと同時に目を開け、お館さまを見据える。
近い未来を、煉獄さんの未来を、変えたい。
そう心に言い聞かせ、話し出す。
「ここ1ヶ月以内に、炎柱煉獄杏寿郎は上弦の鬼との闘いで、命を落とします」
お館さまから笑顔が消える。
「詳しく教えてくれるかい」
「はい。煉獄さんは列車で乗客や隊員がいなくなることを突き止め、列車に乗車します。そこには竈門炭治郎、禰豆子、吾妻善逸、嘴平伊之助の4名も乗り合わせます。列車は下弦の壱の鬼で、何とか倒すのですが、その後に上弦の参が現れます。その上弦の鬼との闘いで煉獄さんは命を落としてしまいます…」
一気に話す。要点だけだ。
「私には煉獄さんを助けられません。生きていて欲しいから、お館さまにお話しました。でも、この後どうなさるかは、お館さまにお任せします。私は情報として、近い未来をお話しました。でも、その通り進むとは限りません…私という異分子がいるだけでも、ずいぶんと話が変わっているかもしれませんし」
私が言いたいことを全部だしてから、お館さまはやっと口を開いた。
「ノブ、本当にありがとう。こんなに辛い未来を知っていて、一人で抱えていたんだね。ノブはすごい子だ。教えてくれてありがとう」
お館さまの言葉に、ふと涙が零れる。気づいてなかったが、緊張していたようだ。糸が切れたように、突然涙が溢れだした。