第9章 再びお館さまの元へ
襖を開けると、そこにお館さまがいた。こじんまりとした部屋で、本や机がある。お館さまの書斎のような場所なのだろう。
「こんにちわ、お館さま。お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「ノブ、久しぶりだね。元気そうな声だ。さぁ、入っておいで」
「はい。失礼します」
言われるがまま、部屋の中に入ると、あまねさまは襖を閉めていなくなってしまった。
「さぁ、立っていないで、ここに座りなさい」
お館さまの前に座布団が準備されており、片手でそれを触りながら、お館さまは私を呼ぶ。
「はい。では失礼します」
ゆっくりとお館さまに近づき、座布団に座る。
「心配してたんだよ。元気にしてるようで、安心したよ」
「いえ、その節は大変お世話になりました。あ、でも今もお世話になってますね…。おかげ様で、とても楽しく生活させていただいています」
「うん。前に来たときと声が違う。しっかりとした、とてもいい声だ」
「ありがとうございます。誉められると嬉しいですね」
「ふふふ。正直な所はかわってないな」
「はい。ありがとうございます」
二人で笑う。
「失礼します。あら、楽しそうですね。お茶とお菓子、お持ちしましたよ。ごゆっくりどうぞ」
あまねさまは持っていたお盆を机の上に置くと、すぐに部屋から出ていってしまった。襖が閉まると、待っていたとばかりに、お館さまが口を開く。
「さぁ、ノブ。何かあったのかな。それとも、何かがあるのかな」
さすがお館さまだ。この言い方、間違いなく答えは後方だと分かった上で質問しているのだろう。
「はい。聞いていただけますか?うまくまとまらないかもしれませんが…」
「もちろん。そのために来てもらったのだから、大丈夫だよ」
その言葉に安心をして、話し始める。
「こちらで生活させてもらって、最初は慣れるのに精一杯だったんです。でも、最近は落ち着いてきて、色々と考える余裕が出てきました」
お館さまは私の方を向いて、話を聞いてくれる。
「そこで、ちょっと思い出したことがあって…でも、伝えていいものか、すごく悩んだんです。私が知っていることを話してしまって、私の知っている未来が変わってしまうんじゃないかって…」
「でも、ノブは、私に話そうと思ったんだね」
お館さまの優しい声が私を包んでくれる。
「はい」