第9章 再びお館さまの元へ
「ごめんくださ~い。ノブ様をお連れしました~」
後藤さんが玄関で叫ぶ。
奥の方から足音が聞こえてくる。あまねさまだ。
「ノブ、久しぶりですね。元気にしてましたか。さぁ、あがって。お館さまもお待ちですよ」
「あまねさま。お久しぶりです。今日は、お招きありがとうございます。またお会いできて嬉しいです」
深く一礼をし、顔をあげる。自然と笑顔になる。そして、横にいる後藤さんにも頭を下げる。
「後藤さん、ありがとうございました」
「いえ、仕事ですので。それでは、あまねさま、ノブ様、失礼致します」
後藤さんも深く一礼をすると、そのまま玄関から出ていってしまった。
「さあ、あがって。すぐにお館さまの所にご案内しますね。それと、ノブに謝らないといけないことがあるの」
お屋敷に上がり、歩きながら話す。謝る?何をだろう?
「どうしたんですか?」
「それが、今日はゆっくり泊まっていってもらう予定だったのだけど、急に子どもが熱を出してしまって。大事はないのだけど…」
「いや、お子さんのお熱は心配ですよ。あまねさまはお子さんについてあげてください。私はお館さまとお話できたら、すぐ戻りますから。お泊まりはまた今度。また誘っていただけますか?」
体よく断られているのなら悲しいが、それが分かれば今後も無理は言わないのだ。
「えぇ。私もゆっくりノブと話をしたいし、子ども達もね、あなたと話したいって言ってるのよ。今日熱を出した子が特にね。だから、またゆっくりと来てもらえるかしら」
「もちろんです!」
嬉しい返事だ。あまねさまがにっこりと微笑みながら伝えてくれる。その微笑みにつられて、私もにっこりと笑う。
お館さま程ではないが、あまねさまも話していると少しだけふんわりとした感じになる。あまねさまもそういうお力があるのだろう。
話しながらなので、すぐにお館さまの部屋に着いた。前回話をした場所とは違うようだ。
「ノブをお連れしましたよ」
あまねさまが部屋の前で声をかけると、心地よい声が返ってきた。
「待っていたよ。入っておいで」