第9章 再びお館さまの元へ
お館さまに会いに行けばいいとは分かっても、私には行く術がなかった。
「はぁ、爽籟、実弥さんには鴉がいていいなぁ。私にもいたら、都合のいいときに連絡が取れるのになぁ」
実弥さんの鴉に話しかける。
「オ前ニモイルダロウ」
「へっ?いないよ~。私は鬼殺隊員じゃないし」
「イヤ、ズットイルゾ。気ヅイテナカッタノカ」
衝撃の事実に頭が回らない。
「えっ?えっ?いつからいるの?えっ?ずっといる?どこに?えっ?いた?」
「焦リスギダ。オチツケ」
「ごめんなさい」
鴉に突っ込まれ、若干落ち着きを取り戻した。1度深呼吸してから、尋ねる。
「私にも鴉がついてるってこと、だよね。それは、最初から?お館さまの所に行ってから、なのかな。まぁ、いつからかは、いい。私についてるって鴉はどこかな?教えて、爽籟」
「オイ、木蓮」
「ハジメマシテ、三井様」
籟爽の隣にふわりと一羽の鴉が降り立つ。実弥さんの鴉より、一回り小さな鴉だ。
「初めまして、木蓮。そういえば、あの木の枝によく止まってた?」
「ハイ」
「よくいるなぁと思ってたけど、木蓮だったんだね。早速なんだけど、お願い聞いてもらえるのかな?」
「ハイ。三井様ニツイテイルノデ、何ナリト」
様付けは違和感がある。
「ありがとう。まずはノブって呼んでね。三井様なんて、むずがゆすぎるから。あとは、敬語もなしで、お願いね。難しければ、段々と慣れてもらったらいいし。」
「分カッタワヨ、ノブ。デハ、願イハ?」
理解の早い鴉だ。この方が話しやすいしお願いもしやすい。
「お館さまに、会いたいの。できるだけ早く会いたい。どうしたら会える?」
「ワカッタ。私ガオ館サマニ話シテクル」
そういい終えると、木蓮は青空へと飛び立っていった。
「爽籟、実弥さんにはこの事はまだ話さないで欲しいの」
「浮気カァ」
「ははッ!お館さまに浮気?面白いこと言うわね。時期がきたら、ちゃんと実弥さんには私から話すから。それまでは。お願い。私が色々としていることは秘密にしてくれる?」
「アァ。チャント後デ話セヨ」
「ありがとう」
どことなく実弥さんに似ている。
飛び立っていった爽籟を見ながら、そう思った。