第9章 再びお館さまの元へ
蜜璃ちゃんと会って気づいたことがある。
そう。煉獄さん。
私がこの世界に来て、もう2ヶ月が経つ。ちょうど成田蜘蛛山と柱合会議の頃だから、今は蝶屋敷だろう。
そこが終われば、無限列車だ。
詳しい時期は分からないが、そろそろなんじゃないかと思う。
昨日蜜璃ちゃんと話したときに出てきた、煉獄さん。
日々の生活で、物語のことをすっかり忘れてしまっていた。
このままだと、煉獄さんは死んでしまう。
この物語はそうだった。
でも、このまま物語が進むのを、指を咥えて待っていなきゃならないのか、と思ってしまう。煉獄さんが死ななければならない理由はない。
煉獄さんの死で、彼らは一つ成長した。
でも、死を乗り越えなくても、彼らはきっと強くなれるだろう。煉獄さんがいることで、違う成長もできるのではないだろうか。
それに、私がここにいる時点で物語は狂い始めている。私が見ていた「鬼滅の刃」には、私のような女は出てこないのだ。
だからこそ、私が知っている結果になるとも限らない。
どうすればいいのだろう。
…いや、どうしたいのだろう。私は。
私には煉獄さんを助けられるような医療技術も戦う術も持っていない。現場へ行っても、足手まといになるだけだ。むしろ邪魔をしてしまうし、無惨に見つかる可能性が高まってしまう。それは避けたい。
私が持っているのは、未来の記憶だ。
不確かかもしれないが、これから起こりうる未来を知っている。
だが、どうすればいい?
この知っている記憶を誰彼構わず話せるものではない。実弥さんにもだ。まず頭のおかしい者だと、思われるだろう。
そうそう、信じられるものではない。
……そうだ。
一人だけいた。
私のことを理解してくれている人物が。
前置きもなにもなく、そのまま話してもきちんと理解してくれる人物が。
そして、何より、対策が立てられる人だ。
なぜもっと早く、気づかなかったのだろう。
…お館さまだ。
今すぐにでも、お館さまに、会いに行かなければ…。