第8章 恋柱
【実弥side】
そんな事を考えながら返事をする。
「アァ?お前は居候だが、そんなに気にしなくていい。それに甘露寺は煩いが、悪いやつじゃねぇ。まぁ、馬鹿なお前とは合うんじゃねぇかァ」
言いながら、顔が緩むのが分かる。
「もうっ。私は馬鹿じゃありません!たまにおかしい言動をするだけです」
ほら、また面白いことを言う。
「それを自分で言う時点で馬鹿なんだよォ。自覚してるじゃねぇかァ」
「うーっ!じゃ、馬鹿でいいです。お馬鹿なノブは、今日の夕食は卵焼きを作るけど、実弥さんの分を作るのを忘れます!あと、おやつのおはぎも間違って食べちゃうんです~!」
ノブが横を向く。流石に怒ったかァ、それにしても言うことが幼稚過ぎだァ。
「おい、ノブ!何だ、それはァ!」
「…せめてもの抵抗です…」
横を向いていた顔がまた俺の方を向くが、いつもの笑顔じゃねぇ。ちょっとからかい過ぎたか、と思った時だった。
「ぷっ。ハハハハ。何とか思い付く意地悪言ってみたんですけど、ダメですね。ご飯食べてくれると幸せだから、我慢できません。卵焼きとおはぎ出しますから、ちゃんと食べてくださいね」
突然笑い出すと、いつものノブに戻っていた。
「結局、何なんだ。お前はァ」
「うーん。実弥さんが大好きって事ですよ」
満面の笑みで言われ、一瞬言葉を失う。
「……お前、やっぱり馬鹿だろォ。何で今の会話の流れで、そうなるんだァ。もう、これ以上話してても意味がないなァ。甘露寺といい、お前といい、話しても疲れるだけだァ」
そうだ。何故か好きだと平気で言う。他の隊員や近所の奴らから怖がられてるのが分かる。俺はこんな見た目だァ。口も悪いし、怖がらない方がおかしい。
なのにノブはほとんど怖がる事はなかった。今みたいに笑いながら変なことを口走るから、調子が狂うんだァ。
「さぁ、ご飯の準備しますね。時間も遅くなったから、簡単に作っちゃいますね!大丈夫!ちゃんと卵焼きも作りますから」
色々と考えていたが、ノブは何も気にしてないなァ。まぁこんなだから、一緒に生活していても俺も楽なんだがなァ。
台所に向かって歩いているノブの後ろ姿を見ながら思う。