第2章 暗闇からの光
玄関先に下ろされると、実弥さんは明かりをつけた。
そして尋問するかのように私の前に立ち、腕組みをする。
「三井ノブは間違いないよなァ。もう一度きくぞ。年齢はァ?いくつなんだァ」
「だから四十ですって」
「いや、絶対違うだろう」
「いやいや、私の記憶が間違ってなければ、四十ですよ。どうみても四十でしょう」
「いや、だから、どうみても四十には見えねぇから、言ってるんだァ。俺より下にしか見えねぇぞ」
そんなわけはない。仕事に育児に家事に追われ、自分の事なんて後回しも後回し。
日々のお肌のケアすら忘れることもあるんだから。
「あなたの目は節穴ですか?暗いから間違えてるだけですかねぇ」
「誰の目が節穴だァ!!」
あぁ、いくらなんでも節穴はだめだった。怒らせてしまったかもしれない。
「ごめんなさい、ごめんなさい!!許してください。殺さないで~」
「いや、こんなことで殺しはしないが、本当埒があかねェ。歳のことはもういい。それより、他に何も覚えてないのか」
何となく考えていたことを話す。
「あとは…、事故に合ったと思うんです。でもこんな場所ではなかったんです。自分でも何がなんだか分からなくて。私の記憶していることと現実があまりにもかけ離れ過ぎてて。歳のこともですし、自分の記憶の通りに話すと、この現実と全く当てはまらない様ですし」
話がまとまらない。
自分でもよく分からないのだ。
説明できる事実も確証もない。本の中に迷いこんだなんて言った日には、頭がイカれてしまった人にされてしまうだろう。
ただ思い当たることを口にだした。自分でも何を言っているのか分からないのだ。
理解してもらえるはずがない。
「全く分からねェ」
思った通りの答えが返ってきた。
「そうですよねぇ。話している私も全く分かりません。何だか浦島太郎の気分です…」