第8章 恋柱
【実弥side】
そうだよな、自分の知らない所で好き勝手言われてるなんて、こいつでも驚くよなァ。
「ああッ!そうだよッ!何度も違うと言ってるのに、誰も話を聞きやしねぇ。埒があかねぇから、もう勝手に言わせてる」
「…何だそれ。頭痛くなってきましたよ…」
どこか焦点の合わない目線で、遠くを眺めながら話す
ノブは、さっきの違和感は感じない。
気のせいだったか。
甘露寺を改めて見ながら言う。
「全くだ。なぁ、甘露寺ィ、お前はもうノブが居候だって分かったよなァ」
「大丈夫よ、不死川さん。分かったわ。でも、二人とも仲良さそうで良かった。最初言い合ってる声が聞こえて、苛められてるんじゃないかと思ったんだから」
「まぁ、怒鳴られましたけど、大丈夫ですよ」
「お前の言い方が悪いんだろうがァ!」
「そんなことないですって。実弥さんはちゃんと話したら、ちゃんと聞いてくれますし。口は悪いですけど、何だかんだ優しいですから」
いつもこうだ。
こいつ…ノブは、何故かすぐ俺の事を優しいと言う!
「アアッッ!優しくねぇッ!!俺は戻るぞッ!」
もうこいつらと話していたら、終わりが見えねェ。調子も狂う。
背を向け歩き出す。
「実弥さん、私の初めてのお友達。とってもいい子でしょ?」
あいつの声は聞こえたが、返事はしない。
しなくても、あいつのことだ。答えは分かっているだろう。
後ろで二人の声がするが、俺は聞こえないふりをして、道場に戻った。