第8章 恋柱
【実弥side】
あいつがここに来て、二ヶ月近く経つ。
だが、特にこれといって変わりはない。あいつはどんどん踏み込んでくるのかと思ったが、そんなことはなかった。
適度に距離を保ってくれてる。
一人で過ごしてきた時間が長い俺にとって、他人がいる生活は、落ち着かない。
隠の斉藤に来てもらっていたが、それも自分がどうしようもなくなった時だけだった。
自分のペースを崩されるのは、一番キツイ。
あいつの第一印象は最悪だった。
どんな生活になるのか、戦々恐々としたもんだったが、それは杞憂に終わった。
あいつは、きちんと仕事はやる。そして、後はいないように過ごして、俺が必要だと思う時にふと気配をさせる。
だから、気づけば二ヶ月経っていた。
そんなあいつだが、今日は厄介事を持って帰ってきやがった。
さっきまで気配すらなかったのに、突然出て来たと思ったら、だいたい厄介な事を言い出すか、持ち込むかだ。
まだ机と椅子の方がましだったぞォ。
ふと、今日の事を思い返す。